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官能私小説 雪色の美少女(14)


は じ め に

ここに執筆するのは、今までの創作内容と一線を画しています。そうかといって、「暴露本」や「告白本」のような体験本とも違います。
 くわえて、想像力や過去の官能作品からのイメージをなぞって書いていた内容とも、まったく別物ということです。個人的には、創作内容は他者に伝達したいメッセージがあり、何かしらの形で織り込むことだと思っています。
 今回やろうとしているのは、記憶の断片をトレースして、まとめ上げていく作業のような内容です。そのため、途中で走り書きのような形でとん挫する可能性もありますし、無事に何かしらの形としてまとまったからといって、メッセージ性があるかどうかは、読者に委ねる形になります。
 その点をご了承いただいた上で、ご覧くだされば幸いです。

雪 色 の 美 少 女(14)

「どうせ、部屋でごろごろしているんだろうと思ったんだ~。どっか遊びに行かない? ぼっちだと行く気にならないんでしょ」
「ほっといてくれ。身体を休めるために、休日はあるものだ」
「お爺ちゃんみたいなこと言っていると、老け込んじゃうよ」
「……あのねえ」

おへそでイカせた日から、舞の態度は明らかに変わった。
それまでは何度も肌を寄せ合って夜を過ごしたにもかかわらず、どこか距離感があったような気がする。薄氷の壁が、あの満月の夜で溶けたのだろうか。

(なんかちがう気がする……なんだろう、この違和感は)

現実的に考えれば、美少女がホテルのマネージャーから怒られる覚悟で部屋に遊びにくるはずはない。わたしが個人的にデリバリーしたわけでもなく、初対面のときに金を渡して帰らせようとしたら、断ってきた。

ブラウンのハーフニットとブラックのスカート、ストッキングはフォーマルな雰囲気すら漂わせる舞らしい服装だ。しかし、仲が良くなったとはいえ、彼女の口調はずいぶんあどけなく感じた。
わたしはひとつの仮説を立てていた。ただ、立証する手段は思い浮かばない。

「なに難しい顔しているの? あ~、Aちゃんはそういうのが好きなんだ? へえ……本当?」
「ん……おいおい! あれはちがう。おい、勝手にドン引きするなよ。いきなり来るからだぞ」
「え、舞のせいにするんだ……じゃあ、同じようにされちゃうのかしら」

舞が潤んだ瞳で見つめていたのは、テレビ画面だった。ローカル放送の番組に興味はなく、わたしは各階で販売しているビデオカードを購入して、エッチテレビを鑑賞していた。

テレビに映っていたのは、SMモノである。アイマスクをされて、両手を背中へまわされた少女が、バックからエッチをねだっていた。淫猥な映像を止めようとリモコンを取ろうとすると、彼女にひったくられる。

「いいわよ」
恥ずかしそうに彼女はマフラーを取って、顔をそむけた。
「は!?」
一瞬、わたしは彼女が何を言っているのか理解できなかった。

『ねえ、もっとぎゅっと……あううっ、いい、いいですう。ああ、そこじゃなくて、もう少しおくまでぇ』
『ふん! ここかぁ。ひくひくしている』
『んふっ、焦らすのいやっ……ね、ねえ……』

いかにも演技くさい台詞と絡み合いの映像を、舞は指さした。
「ああいうのからスタートしましょ。でも手錠なんてないから、インシュロック使ってちょうだい。アイマスクはあるの」
「は!?」
「Aちゃんは水着フェチ? それとも体操服? ナース服? それともボンテージ? 一応、全部持ってきたわ」
「は!?」

彼女の話に突っ込みを入れているうちに、少女はもう一つのベッドで服を脱ぎ始めた。ぞっとする流し目で、セーターから脱いでいく。細身に似合わない豊乳が少しだけ弾む。

(おい、アレと同じプレイをここでするのかよ!?)

わたしは暖房の風量を最強にした。ほかに音を紛らわせる手段が思いつかない。この前のよがり声ですら、隣室に聞かれたのではないか、ハラハラしていたのに、朝からしなった声で叫ばれたら、掃除係のおばさんが警察に通報するかもしれない。

不思議にも、彼女の暴走を留める気は起きなかった。わたしは自分なりに立てた仮説を検証するチャンスかもしれない、と思っていたのだ。

「どれにするのぉ? 答えなさそうだから、水着にしよう」

こちらの思惑など関係なしに、舞はマイペースで下着姿になった。黒い無地のブラジャーとショーツに、真っ白な雪肌が映える。スレンダーな美少女は、その存在だけで尊いものだと思えるほど、脱衣の一部始終はうつくしい。

(もう、Xさんのことは忘れることにしよう)

一瞬、大恩ある上司の存在が脳裏をよぎったが、振り払うことにする。彼はここの大義を終えて、新天地のプロジェクトを遂行するため、準備しているはずだ。舞どころではないはずなのだ。

結局のところ、そう思い込むことで、眼前の美少女と禁断のエッチな行為に及ぼうとする己を正当化したい。それが、隠しようのないわたしのホンネだった。


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宇佐見翔
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