生徒に評価ルーブリックを作成させる

科目等履修生として国語科教育法を受講していますが、先日、他の学生の模擬授業の中で、発表を評価するルーブリックを生徒たちに作らせるという活動がありました。評価ルーブリックを生徒に作らせるというのが、国語科教育の中では一般的なのか否か、そもそも私が不勉強なだけで英語教育においてもよく見られる取り組みなのか存じませんが、少なくとも私にはこれまでその発想はなく、斬新なものでした。

過去の投稿で評価ルーブリックについて複数に渡って書いているように、私自身もルーブリック評価をよく活用します。これまではいつも授業者・指導者である私自身が、望ましいパフォーマンスや生徒の実情を考えながらルーブリックを作成していましたが、今回、学習者にルーブリックを作成させるという発想に出会い、これについて少し考えてみることにしました。

生徒にルーブリックを作らせる実践

生徒にルーブリックを作成させる実践について少しネット検索してみると、主に総合的な学習の時間や探究活動などで実践が見られるようでした。

また、英語教育においては、佐賀大学文化教育学部附属中学校1年での実践をまとめたこちらの論文(横山, 2014)に巡り会うことができました。

パフォーマンス課題と ルーブリックで発信力を 問う英語授業 〜1年英語科 SP2 道案内「留学生に佐賀大学 周辺マップを作って紹介しよう」を通して〜 

こちらの実践では、おおまかに以下のような流れで生徒に発表の評価ルーブリックを作成させています。

  • 教師のモデルパフォーマンスをもとに、相手にわかりやすく説明するための要素を生徒に考えさせて挙げさせる

  • それらを分類して項目立て、評価基準を作成(ルーブリック第1案)

  • 中間発表会でルーブリック第1案を用いた相互評価を行い、評価項目の見直しと修正を行う(ルーブリック第2案)

こうしてできた最終形(ルーブリック第2案)として以下のものが報告されていました。

生徒と作成したルーブリック第2案(横山, 2014)

このように、生徒に評価項目と評価基準を考えさせることにより、生徒自身がどのようなパフォーマンスが望ましいのかを深く考えるきっかけになるため、非常に重要な実践であると感じます。

一方で、上記の実践のように生徒に評価項目を挙げさせてそれらを評価基準の形式に言語化し、また修正をかけていくのは、かなりの時間と労力がかかる取り組みです。率直に言って、毎度のパフォーマンス課題においてこのようなプロセスを踏むことができる教育現場はめったにないでしょう。

評価項目の一部のみを生徒に作らせてはどうか

より現実的な取り組みとして、教師が予め用意する評価ルーブリックの一部分のみを空白にしておいて、1項目のみの評価基準を生徒に作成させるということができるかもしれません。

生徒がルーブリックを作成する取り組みにおいて最も効果的なのは、評価基準を作成することにあると思います。自分で実践してみたわけではないので想像でしかありませんが、項目の列挙と分類はなかなか包括的になりにくく、難しそうと感じます。一方、決められた評価項目について、望ましいパフォーマンスや及第点のパフォーマンスなどの基準を考えることは、生徒たちにもそれなりの具体性をもって考えることができるはずです。

例えば、先述の佐賀大学文化教育学部附属中学校のルーブリックから、「目線・態度」の項目のみ評価基準を空白にしてみました。

佐賀大学文化教育学部附属中学校1年(横山, 2014)のルーブリックを一部加工

このようなルーブリックを生徒に提示して、ABCそれぞれの評価基準を言語化させれば、「目線・態度」に求められるパフォーマンスへの理解が深まることが期待できます。

Students-made Rubricsの可能性

上記のように一部だけ作成させる以外にも、例えば年度の初めには全ての項目の基準をあえて抽象的なものにしておいて(A「すばらしい」、B「合格」、C「要改善」など)、年間を通して一つずつ、少しずつ評価基準の文言を生徒と作っていくなんて取り組みも考えられるかもしれません。

いずれにせよ、評価者である教師が一方的に評価項目・評価基準を定めてしまうのではなく、生徒自身で主体的に評価に関わることで、生徒のagencyやautonomyを高めることにもなり、深い学びにつながります。

いろんな実践の仕方がありそうです。まずは、教師がすべて評価を担うという考えからの脱却が第一歩となるでしょう。

参考文献

横山千晴 (2014). パフォーマンス課題と ルーブリックで発信力を 問う英語授業 〜1年英語科 SP2 道案内「留学生に佐賀大学 周辺マップを作って紹介しよう」を通して〜 (第29回(平成25年度)東書教育賞優秀賞) 


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