だれの名残があるのだろう?
台風が通過して、雨戸を開けたらなにごともなかったかのような朝がそこにあった。眠りをさまたげる雨音を鳴らした雨雲の影も、家を揺らした突風の吐息もなかった。
不思議だなと思って、外に出たら、ちゃんとそこには名残があった。
枝や葉っぱが道路にちらかって、見慣れない木のかけらが横たわっている。
全部を夏の湿気も吹きとばした空気はどことなく澄んでいて、呼吸がしやすい。
物事はつながっていて、過ぎ去ってしまったものにもどこかに名残がある。ものも空間もそう。
そして、人間も同じだ。
友達も家族も、恋人も同僚も上司も、関わった人の名残がある。
あの人の喜び方は誰かをまねたもので、怒り方はどこかで見たものだ。優しくしてくれるのも、冷たくあたるのも、きっとだれかの面影がある。目をこらして見れば、後ろに浮かびあがってくる。それはだれだろうか?
僕自身は、いったいだれの名残をやどしているのだろうか?
それを歓迎できるか、それとも消したいと思うのだろうか?
そして、僕もまた関わる人の中に影をおとしていく。
だれに、どんな名残をつけていくのか。それを意識しながら生きていくのも楽しいかもしれない。
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