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ラストマイル 考察 脚本家・野木亜紀子が作品で伝えたかったこととは!?

随分前から楽しみにしていたラストマイルをついに見てきた、、、!

半年以上前にこういう映画やります!っていう発表があったときから野木さんが書く満島ひかりと岡田将生が主演の映画なんて観たいに決まってんじゃーん、と思っていて、ついに公開された!ということで早速観てきた。

本題に入る前に、ラストマイルの脚本家・野木亜紀子さんについて。
この方は逃げ恥、MIU404、アンナチュラルといった名作を世に生み出しまくっている天才脚本家である。物語としてちょー面白い脚本を書くのはもちろん、逃げ恥を観ていた人ならわかると思うのだが様々な社会問題を作品の中で重くなりすぎずにうまーく扱う社会派な一面も持つ。

そしてこの野木さんの社会派な一面がいかんなく発揮されていたのが今回のラストマイルだと感じた。

ではここから野木さんはこんなことを言いたかったんじゃないかなーということを主に3つに分け、それぞれに関する映画の中での描写について書いていく。

※以下はネタバレあり、というか、読んでくれる方がこの映画を観たことを前提にしています。これから観るよって方はたぶん読まないほうがいいよ。

①普段目に見えない労働者の尊さ~日々働いてくれてる方々、まじセンキューー!!!~

これはこの映画を観た誰もが、感じることができたんじゃないかと思う。

デリファスの大きな工場の中で、億単位の数の製品がものすごい数の従業員によって箱に詰められ、出荷されていくシーンは壮観だった。

商品が出荷されたあとも、映画の中で佐野(演-宇野祥平)が言っていたように宅配ドライバーさんの手によって間違いなく正確に、時には決まった時間に荷物が届くのも考えてみればとてもすごいことである。

今日頼んで明日届くあの荷物も、何人もの手を渡って私のもとにやってきているのか、、となんだか人間の創り上げた社会の凄さを感じた。

便利な製品で溢れ、欲しいものを頼めばすぐに手に入る現代に生きる私たちだが、この生活がたくさんの人々の"仕事”によって支えられているということは頭では分かっていても、なかなか普段の生活では可視化されることがなく、まるでその仕事が存在しないかのように考えてしまっていることもあると思う。自らの労働のことで頭がいっぱいで、他者の労働に目を向けられる余裕がないということもあるだろう。
それを莫大な予算を使って、視覚的に確認させてくれる映画だった。

②"効率化"を最優先する現代社会の行く末

とんでもない数の従業員がゲートを通過して物流倉庫センターの中に入り、それぞれが持ち場につきノルマをこなしていく光景は美しくもあり、同時にあまりに効率化されすぎていて怖くもあった。

デリファスの新製品であるデイリーフォンは、デリファスのサービス(たぶんアマプラの特典みたいな感じ)を使いこなせるように作られていると舟渡エレナ(演-満島ひかり)は話していた。大企業の商品やサービスによって暮らしは便利になる一方で、そのような企業の囲い込みによって他の中小企業は経営が圧迫され倒産に追い込まれていったり、大企業に依存した経営を強いられたりする場合もある。

劇中での、羊急便の八木竜平(演-阿部サダヲ)とデリファスのエレナの電話のやり取りがまさにそれで、取り扱い荷物の6割がデリファスの製品である羊急便は、デリファスの無茶な要求にも応じなければならなかった。

また、佐野は働いていた家電製品の会社が倒産したため配達員見習いをしているが、その会社について佐野は「扱っていた製品は質のいいものばかりだったが、激しい価格競争に勝つことができなくなってしまった」と話していた。

佐野の会社の洗濯機のように、ある程度値段が張るものの質の良い製品が競争に負け、大企業で徹底的に効率化された工場でコストを抑えて作った製品や、労働者を酷使し格安で作った製品ばかり売れてしまう。

最近、SHEINやTemuなど海外の格安通販サイトの商品から発がん性物質が検出されたことがニュースになったが、SHEINなどの格安通販ブランドは以前から悪質な労働環境や賃金の低さなどが問題になっていた。多額の投資をして効率化を図れる大企業以外が生き残るには、労働者が犠牲にならなければならない構造ができあがってしまっているのだ。劇中では最終的に、デリファスと羊急便のストライキによって宅配料の利上げ交渉に成功していたが、荷物1つあたりたったの20円の値上げであり、彼らの生活が大きく変わるとは思えない。
この問題がそう簡単に解決されるものではないことが示されていた。

③仕事よりも命が大切であるということ

この事件が起こってしまったきっかけが山崎佑(演-中村倫也)の過労による自殺であるということに加えて、主人公である舟渡エレナと梨本孔(演-岡田将生)の2人も過労によって心身のバランスを崩す経験をしている。

エレナはアメリカ本社での過労で精神病を患い薬を飲みながら仕事をしており、孔に関しても前の会社の過酷な労働環境から、転職したと話している。

孔に関しては転職するという選択を取れているが、エレナは過労によって体を壊してもなおデリファスを辞めることができず一連の大事件を経てやっと最後に、辞める決断をしていた。

仕事よりも命が大切であることなんて当たり前で、言うまでもないことなのだが、日本での勤務に関する問題を原因とする自殺はここ9年間で毎年年間2,000件を超えている。(厚生労働省より)
長い期間、過労の状態を続けることで正常な判断を下すことがもはや不可能になり山崎のように死を選んでしまうのかもしれない。働き過ぎで命を落としてしまうなんて、こんなに悲しいことはない。

責任感を持ち、真面目に働いていたエレナや孔、山崎が辛い思いをして、利益や自分のことしか考えていないサラや社長(演-ディーン・フジオカ)が能天気に働いちゃったりしている。現実社会でも同じことが言えると思う。頑張っている人が報われる社会であってほしいと願うばかりだ。

さいごに

さてさてさて、だいぶ語りましたねー。大学のレポートだと2,000字とかでもダリィって何日もかけてダラダラよくわからない文章を書くのに、この記事、気づいたら3,000字超えですよ。すげー。単位ください。

おもしろくてためになる。野木脚本、最高です!また機会があったら映画の感想書こうと思います。ラストマイル、まだ観ていない人はぜひ観てね!


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