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小説とは「大変だから大変」を伝えること

ここでまたひとつ「小説とは何か?」についての答えが見つかった。それは「大変だから大変」ということを読者に伝えるのが小説だということだ。べつな言い方をすれば、言葉(A)を使って言葉(B)では伝わらないものをつくり出すのが小説だということである。 Aの言葉は「小説語」、Bの言葉は「日常語」と言い換えてもいいが、私の言う「小説語」とは、これまでの小説で使われてきた語彙や表現、思考ではない。詳しいことは後で触れるが、もっと自分の内側から出てくる言葉、もっと身体性のある言葉なのだ。

保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』中公文庫

「身体性のある言葉」ってよく言われることだ。要するに自分の体験に基づいた地に足の付いた言葉であり、頭の中でこしらえた言葉ではないということである。

これがわかっているかどうかは大きな差だ。

ただわかっているのは必要条件であり、十分条件ではない。わかっていてもできないことは世の中に多い。しかしわかっていないとできないのである。


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