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本物のコンフィデンスマン
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先週末からなんだか、心がモヤッとジメッとしている。
きっと私以外にも沢山の人がそうなんだろう。
爽やかで綺麗で儚い、それでいて優しい笑顔がとても印象的。
同世代ということもあり、自分の青春時代に見たドラマや映画に当たり前に出ていて、ここ数年は色気も出ていてとても素敵な男性という印象だった。
ネットニュースを見たときは、二度見と共に「えっ…」と声が不意に出てしまった。
そして、連日の報道で少しばかり明るみになった様々なことを見聞きし、誰であれ本当の真の部分は家族だろうが友人だろうが、他人だろうがわからないものなんだよなと痛感した。
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もう今から15年程前。
私自身、それを身を持って経験したことも思い出した。
クリスマスイブの前日、まだ携帯電話が二つ折りだった時代。
朝、着信音に起こされ、寝ぼけたまま電話に出た私の耳に入った言葉は同級生の訃報だった。
15年の時が経っても、未だ、あの日のあのシチュエーションも自分の心臓がバクバクと音を立てたこともハッキリと覚えている。
まだ10代だった私には信じ難い、辛い体験だった。
密葬という形で執り行われた葬儀。
最期を見送ることもできず、彼女が自宅へ戻ってから線香をあげに行った。
仏壇に飾られた写真の中の彼女は記憶の中と変わらずとても元気に綺麗な笑顔を私たちに向けていたことも、覚えている。
それでも、実感するにはまだ時間がかかった。
未だに私のスマホの連絡帳には彼女の名前が残っている。
あれから何台と携帯を替えても、彼女の名前を自ら消すことは出来なかった。
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そんなことを思い出した、週末。
あの当時、自分が感じた感情や衝撃に嘘はないのに、年月や日々の日常の中で、常に自分と共にあるかというと違う。
常にそれに縛られているわけではない。
ただ、同じような出来事に出遭う度に振り返る。
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会いたい人には会おう。
連絡したい人にはしよう。
"いつかまた"と後回しにする癖を直そう。
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未だに彼女がそれを選んだ理由は曖昧で、明確な答えを知ることはもうないけれど、"それを選ばざるを得ない状況下にいた"という事実だけは変わらない。
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コロナが収まったら、久しぶりにみんなで集まろうと友人と話した。
会える時に、話せる時に。
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大好きな映画の公開まであと少し。
白い歯を見せて、優しく垂れた目尻が印象的なあの笑顔と誰にも言えない感情が隣り合わせの中、それを微塵も感じさせなかった彼は、本物のコンフィデンスマンで最高にプロフェッショナルな俳優さんだったんだろうな。