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アイスランド旅行記㉒ロコモコ丼事件とパン作り

前回までのあらすじ

ワーク3日目は、ハイキングへ出かけた。掃除で見つけたスキーストックを持って、丘の上へ。日本に居てもハイキングなんて滅多にしないが、モンベルの広告のような、とっておきの思い出を作ることが出来た。
今回は、アイスランドで食糧難に陥った話と、その解決策を振り返りたい。

気付いたら食糧難

アイスランド旅行記⑲で紹介したように、このワークキャンプの食事は、団体があらかじめ用意した食料を使って交代で料理をする仕組みだった。

食料は、肉や野菜や卵、調味料など、一般的な物が一通り揃えられていた。最初の頃は、様々な物が「さすが欧米!」と感じさせるような大容量サイズで、十分足りるように見えた。しかし、日を重ねるごとに徐々にストックが減っていき(当たり前)、気付いた時には食糧危機に陥っていたのだ。

原因としては、
・料理担当が毎食違うため、みんなその時限りの在庫しか把握していなかった
・「あと何日持たせるために、このくらいは残しておこう」というような堅実な感覚を、アイスランドハイ(?)になって忘れていた
・食材をケチったせいで料理に難を付けられるのは嫌なので、ついつい豪勢に使ってしまう
・自分達で買った食材ではないので、全体量を把握しきれていなかった

等々が挙げられる。

日程の半分ほどが経った頃だろうか。食料不足の危機に気付いたリーダーの女性が、「今後は食料を使いすぎないように」と警告した。もちろん、みんな節約の必要性は理解していたが、その警告はあまり守られなかった。

参加前から「自分はこれを作ろう」というものをある程度決めていたので(例えば私はお好み焼きを作るために、お好み焼き粉を持ってきていた)、臨機応変にメニューを考えて作るのは難しい。少ない食材で上手く料理する術は持っていなかった(特に私)。それに、日本の家庭にある食料とは少し違うので、うまく使いこなせないのだ。

そんな中、事件が起きた。

ロコモコ丼事件

ある日、食事担当だった2人は、ロコモコ丼を作った。ハワイ発祥と思われるこの料理も、ヨーロッパではあまりメジャーではないのか、作る前から「どんな料理なの?」と興味津々なリーダー。
「ご飯の上にハンバーグと野菜と目玉焼きを乗せる」という説明をする2人。
すると、リーダーは「それは美味しそう!」と応えつつ、「卵は貴重だから、1人1個じゃなくて、何人かで分けて作りましょう」と警告した。

しかし、2人はそれを完全無視して、1人1個の卵を使って料理したのだ。(笑)
私はその日の担当ではなかったが、2人とリーダーの会話を隣で聞いていたし、リーダーがその場から立ち去った後に繰り広げられた「いいよいいよ、1人1個で作ろう!目玉焼きがのってないロコモコ丼なんてロコモコ丼じゃないよ!」というような会話に乗っかったので、共犯者といえよう。

なぜ従順な日本人が卵を1人1個使うという反抗的な(?)行動に出たかと言うと、人数に対して明らかに少ない食料しか用意していない団体の運営サイドへの怒りと、共同生活も数日経ち、イラっとすることも溜まってきたことが原因と考えられる。

リーダーの2人はとても優しかったし、毎日私達のために尽くしてくれていた。だが、もちろん文化の違いを感じることもあった。
2人は団体で働いている大学院生だったと思うが、なんとカップルだったのだ。それに気付いたのは2日目ごろ。夜の自由時間にリビングに降りると、2人がソファで堂々と(?)イチャイチャしており、私はたまげてしまった。当時は海外のドラマや映画をあまり観たことが無かったので、海外ではそれが普通ということを知らなかった。数秒固まった後、同じ日本人のお姉さん達と合流し、あれはやばいねぇと笑い合った。

まあ、最初は少しビックリするくらいで、邪魔しないように気を遣っていた私達。しかし、そんなことが毎朝毎晩と続くと、さすがにこちらもムッとしてくる。もちろん、昼間のワークタイムは2人ともちゃんと働いていたし、彼らに何の落ち度もない。だが、やはり日本人が多いワークキャンプだったので、それが原因で多少の壁が出来てしまったことは否めないだろう。

そして、1人1個の卵を使った目玉焼きが乗った立派なロコモコ丼が食卓に並んだ瞬間、リーダー(女)は明らかに怒っていた。リーダー(男)に「使うなって言ったのに、なんなのこの子達は?」というようなことを小声で言っていた(そういう時は母国語を使うので全く分からなかった。でも多分そんなことを言っていたと思う)。
作った側の2人も特に気にせず、「文句があるならどうぞ」というような感じだった。強い!

しかしリーダーは、やっぱり大人だった。怒ったり、声を荒げたりすることは全くなく、静かに食事の時間が過ぎていった。

ちなみに、このロコモコ丼の日だったか忘れたが、リーダーが日本人メンバーの作った料理を、ほとんど手をつけずにゴミ箱へ捨てていたことがあった。日本なら、口に合わなくても頑張って食べる人が多いし、食べられない場合は謝った上で、捨てるにしても相手の目につかないところでこっそり捨てるのがマナーだ。私はそれも結構ショックで、文化の違いを痛感した出来事だった。こちらの行動が原因で、リーダーにストレスを与えたことも数え切れないほどあったと思うので、仕方ないのだが。

このロコモコ丼事件は、11日間の共同生活で1、2位を争う事件だったが、次の日になれば笑顔が戻っており、この件について最後まで再び触れられることはなかった。

パン作りの1日


そんなロコモコ丼事件の前か後か(時系列が曖昧)忘れてしまったが、食糧難は更に悪化していた。

朝食はシリアルやパンを各自自由に食べていたのだが、そのパンすら底を尽きてしまったのだ。私達は「そのうち運営側が追加の食料を持ってきてくれるだろう」と踏んでいたが、その希望は外れた。本当にやばいぞというところまできてしまった。

歩いて行ける距離にスーパーは無く、車も無かった。私はクレジットカード事件のせいで現金が少なかったし、他のメンバーも事前に払った参加費に食費も含まれていたこともあり、自分のお金を使って追加の食料を買うつもりは無かっただろう。

そんな状況に耐えかねて、ある日のワークは「パン作り」となった。

ボランティア活動などと言ってられない状況で、自分たちの明日のご飯を手に入れることがミッションになっていたのだ。

2人ずつ5チームに分かれ、それぞれインターネットで調べてパンを作る。5種類のパンが出来上がるというわけだ。

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↑それぞれのチームが作ったレシピ。
・アップルブレッド
・ナン
・ピザ
・ココアブレッド
・普通の食事パン

という、五者五様のナイスなチョイス!
ベイキングパウダーや砂糖、塩などを使い、一からパンを作っていく。

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↑ワイワイ楽しい調理実習のようだが、明日の食事がかかったサバイバルクッキングだ。

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パン作りなど経験が無かったけれど、みんなで一種類ずつ作ればこれだけの成果があるのだということが、すごく嬉しかった。
「やったことない→出来るかわからない=出来ない」という思考になりがちな私が、「やってみれば何かしらは生まれる」という貴重な教訓を得る。

この日作ったパンは、数日間にわたって私達の胃袋を満たしてくれた。

ボランティア活動から、クッキングへ。
ここにいる人たちは、誰一人としてアイスランドに縁もゆかりも無い。なのに、アイスランドで一からパンを作って生活している。それが面白い。

ここまで書いて、パン作りが先にあり、ロコモコ丼事件はだいぶ終盤だったことを思い出したが、細かいことは気にしないことにしよう。


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