Webライター未経験の私が1年半で編集者になるためにとった5つの行動
「編集者になってみませんか?」
「for Reader」の編集長の新留氏(@kryshnch)からそうお声掛けいただいたのは、2019年7月のことだ。
私は即答できなかった。
「うれしい」という感情より「私に務まるのか?」という不安の方が大きかったからである。
なにしろ私がWebライターとして本格的に活動を始めたのは2018年年明けのことで、そのときの私は一介のゲームシナリオライターでしかなかった。
WebマーケティングどころかSEOという単語すらわからない、ずぶのド素人だったのである。
forReaderは月間で300本の記事を制作する大きなメディアで、ライターをはじめとする作業者の人数は100名近くに及ぶ。
その集団の上に自分が立つということが半ば夢のようでもあった。
「やります」
数日考えてから、私はそう答えた。
ライターから編集者へのキャリアアップは、Webライターとして私が考えていた最終キャリアの一つである。状況だけ考えれば願ってもない。
「失敗してもいいから、まずはやってみろ」そんな心の声に、私は従うことにした。
「なぜ、自分なのでしょうか?」
これは当然の疑問だろう。
多くのライターが所属する中で、私より文章力のある人も少なくなかった。その中で、ライターから編集者という異例の抜擢である。
その理由は、私が他のライターと違ってある行動をとっていたためだったとのことだった。
その行動については新留氏から具体的に聞いているし、私自身も「ひょっとしてこれが功を奏したんじゃないか」という行動に心当たりがある。
編集者は、ライターが目指すべきキャリアの一つだ。記事を書くだけでなく、その一歩上にあるメディアの運用と設計に携わるようになるからである。当然、ライターと比べて報酬も良い。
「編集の仕事に興味がある」
そんなライターに、私がforReaderにライターとして契約を結んでからいったい何をしたのか、編集者に抜擢された5つの行動について解説していく。
1 積極的にヘルプに入る
50人もライターが所属していると、その中には病気やケガ、あるいは何らかの個人的事情によって「締め切りに間に合わない」人が毎月のように出てくる。
記事が入稿されなければ、クライアントからの信用は失墜する。制作事業部にとっては、こうした締め切りギリギリのキャンセルは頭の痛い話である。
私は「forReader」でまだライターだった頃、採用された当初からこうしたヘルプの依頼を積極的に受けることにしていた。
理由は、納期ギリギリの案件は報酬が高かったためだ。それに、こうしたヘルプに入れるライターというのは、どこの会社でも重宝されるものだということを、私はゲームライターの経験から知っていた。
やがて、「他の人に依頼して断られるぐらいなら最初から青井さんに頼もう」という流れになり、編集部とやりとりする機会が増えていったのである。
【ポイント1】
ヘルプを積極的に受けるライターはメディアにとって貴重な存在で、他のライターよりも厚遇されやすくなる
2 メディアが力を入れている分野のスキルを身につける
forReaderという事業部は、株式会社overflowの事業の一つだ。overflowの他の事業には「エンジニアやデザイナーの副業転職マッチングサービス『offers』」や、クレジットカードやローンなどの金融系情報サービス「Fincy」があった。
エンジニアやデザイナー、金融系の領域は執筆できるライターが少なく、ライターを探すのに苦労している様子だった。
そこで私は「この領域について知識とスキルを獲得し、この分野の第一人者になろう」と思ったのだ。
数カ月ほど勉強して、私は編集部に対して「ITパスポート」という資格を取得したことと、「SQL」「JavaScript」などのプログラミング言語についても、記事が書けるスキルを手に入れたことを伝えた。
その結果、この領域の記事の依頼が積極的に来るようになり、また「他者が書いた記事の校正・校閲」という依頼も来るようになったのだった。
【ポイント2】
メディアには、必ず「力を入れているジャンルや領域」がある。それが得意なライターは重宝されるし、インタビューや校正など別の仕事も入って来やすくなる。
3 積極的に編集部とコミュニケーションをとる
ライターが報酬を上げるにはどうすればいいだろうか?
もっとも有効なのは、編集部と積極的にコミュニケーションをとることだ。
編集部から直接お仕事を回してもらえるようになれば、間にマージンも発生しないので、単価も必然的に上がる。条件の良いお仕事を回してもらえるようになる。
編集部の顔覚えがよくなり、お互いに声がかけやすいような関係を構築しておくことはメリットしかない。
「先月は良いお仕事をありがとうございました」
「何かお仕事が余っていれば引き受けさせてください」
「〇〇の記事、担当者が決まっていなければ私が書きましょうか」
こいった簡単なメッセージでいいので、とにかくやりとりを途絶えさせないことが重要だ。
これがだいたいforReaderで仕事をし始めて1年目ぐらいのことだが、私はこの頃、他のライターの記事をチェックするお仕事や進行管理の仕事、インタビューの仕事などをもらうようになっていた。
(私が制作したインタビュー記事)
こうなってくると、毎月の報酬は「forReader」1社のみでやっていけるほどになっており、私としても、今から他のメディアと関係を築くよりもよりforReaderからお仕事を請けた方が良い、となってくる。
【ポイント3】
1社と深く繋がれるようになると、複数社と契約する以上にお仕事も報酬も安定するし、良い案件がもらえるようになる。ただし、その会社が経営的に安定していることが条件。
4 編集部の抱えている問題に対し解決策を提案する
約1年ほどで、編集部からはライター以外の仕事も請けるようになり、同時に事業部が現在抱えている問題点や課題もわかるようになってきた。
事業の全体像が見えるためだ。これは、ライティング専業者との大きな違いだろう。
その頃、編集部では「作業者の評価制度」を作ることに苦労していた。
社内の人材ならともかく、多くが業務委託であるライターに適切な単価や文字数を振り分けるということが難しく、ライターによっては得意領域・苦手領域がある。
そのライターを50人ほど抱えているのだから、一筋縄ではいかない。
私がやったことは、この評価制度を提案することだ。役職ごとに評価項目と点数を可視化し、それを「記事の最終監修者が、記事に携わった作業者を評価する」という制度を発案した。
この提案は採用され、私は編集部だけでなく、株式会社overflowのCEOである鈴木氏(@yutosuzuki)にも名前を覚えられることになった。
【ポイント4】
メディアの抱えている問題をヒアリングし、解決策を提案する。
ここまでくると、編集部としてはもはや内部に抱えたくなる人材となる
5 求められている以上の成果を出す
最後は、非常にシンプルだ。
私が編集部で今現在もこなしている役割は、「他メディアから案件を受ける際の最初の記事を作成する」「他のライターに任せるのが困難な難関領域の執筆」である。
つまり、私は編集者であると同時に、内部のライターとして採用された、というのが現状である。
コンスタンスにコミュニケーションが取れて、納期を守り、依頼先のメディアに納得以上の好印象を与える記事を制作できる人材が、月間300本以上という記事制作を作る事業部では不可欠だったのである。
私はまんまと、そこに入り込めたというわけだ。
内製記事やテストライティングは一切妥協せず、下調べをして、時には赤字覚悟で資料を集めて案件に臨んだ結果、私は編集者兼ライターというオンリーワンの地位に就くことができたのだ。
新留氏との話でも、この要因はもっとも大きかった。
【ポイント5】
先方が想定している期待を良い意味で裏切る仕事をする。
それが何よりも、相手にとって重宝されやすい。
最後に
編集者になると仕事の幅が一気に広がる。
SEOに関する知見やメディア運営に必要なものが、ライターよりも一歩踏み込んだ場所で見えるようになるのだ。
Webライターは、編集者から依頼された記事を執筆する下請けであることが多い。
しかし、ある程度キャリアを積んで、報酬を上げていこうとなると、自分から企画を持ち込んだり、インタビューしたりといった、下請けから仕事を作る側の立場へと変わっていく必要がある。
それは編集者も同様だ。仕事を請ける立場から作る立場になると、Webメディアの仕事が、まるで別の職業のように面白くなってくる。
ライターの中には、編集者のキャリアを目指す人もいるだろう。私の体験が、その一助になれば幸いである。
青井きりん(@aoikirin_writer)
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