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「生演奏」に価値はあるか

生演奏の価値って何だろう。

長らく演奏活動を経験してきて、今この大きな問いにぶつかっている。
音楽に限らず、どういう表現においてもあるあるなんだろうとは思いつつ。

なお、本稿における「生演奏」は、純粋に「リアルタイムで音を発する行為」を意味するので、「演奏している姿が好き」「演奏による演出が良い」といった観点は含みません。


「生演奏っていいよね」の生演奏は、たいてい付加的価値にすぎない

「生演奏」と聞くと、なんとなく「いいね〜」と思いませんか。少なくともマイナスの感情を抱く人はいないはず。

この「いいね」は、ちょっとしたお得感に起因する場合が結構多い。「本日のみ2割引!」みたいな。

要は、「生演奏」はたいてい、何かのオプションに過ぎないのではないかと思うわけです。

何か生演奏を蔑みたいわけではなく。生演奏の価値は常に物事の中心にあるのではなく、むしろ外縁に位置付けられることが圧倒的に多いのではないかということです。

「音源再生で足りる」場面が増えている

録音・再生・音楽制作技術の進歩ってすごい、と思うのです。

細かい音のニュアンスまで録ったり、ステレオどころかサラウンドで再生したり、まるで生演奏かのような打ち込みができたり、エフェクトでホールの音を再現したりといったことが、割と身近にできるようになってる。

「やっぱ生演奏じゃないとね」と言える部分が減ってきているのではないかと。

そもそも、電子楽器や電子音楽が誕生してから、どんどん音楽自体が「生演奏」じゃなくてもよくなってきているのだけど、これがめっちゃ進んでいくんだろうなと感じます。

「生演奏」が持つ本質的価値とは何か

裏を返せば、上記技術が代替できないことが「生演奏」の本質的価値だと考えます。例えば、

  • 録音やスピーカーでは再現できない、アコースティックな音の振動(距離感や会場の響き含め)

  • 打ち込みでは再現できない技巧的な演奏

  • 共演者のリアクションを受けた臨機応変な演奏

色んなタイプの演奏会に参加したり、観たりしてきましたが、室内楽やオーケストラなんかは結構当てはまるイメージです。
めっちゃ幅広いですがインプロビゼーション系の音楽もそうかなと思います。(「これ、音楽か…?」みたいな場合もありますがw)

逆に、レストランでのBGM演奏とか音源流しながらのカラオケ演奏とかは付加的価値音楽であることが多いです。演奏ありきじゃない、付加的価値音楽としてのバンド演奏とかも往々にしてあると思います。

本質的価値と付加的価値のバランスが重要

本質的な価値を求め、押し付けることが正義だとは思っていません。
僕も、エア演奏込みのパフォーマンスでめっちゃ笑ってることあります。
演奏する/聴く音楽の価値をどう受け止めるか、ちゃんと自覚しておかないとなと思いまして。

本質的価値を追うと、「エンタメ」からは遠ざかっていきますしね。

ただ、自分自身としては付加価値的な音楽をやるのはだいぶ苦手だよなーと改めて思って、こういう記事を書いてみました。

音楽に限らず、ここに悩む表現者は実はかなりいると思うので、ちょっとでも共感してもらえたら嬉しいです。

こんなにややこしく考えている人もいなければ、こんなことを考えながらライブを見たり、音楽を聴いたりする人もいないと思いますけど!


お わ り

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