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【告知】1月28日JILISコロキウム「文化資産と生成AI」について開催のお知らせ

 そんなわけで、第3回JILISコロキウムが1月28日夕刻に開催されます!

 お題は『文化資産と生成AI』。さて、これからどうしようね、という話ですが、ご一緒するのは皆さんご存知中井秀範さんでございます。

 今般の生成AIをめぐる著作権制度の議論において、最も注目すべき論点は「教師データ」と「生成物」という2つの側面です。映像であれば、もっぱらテレビ局が放送したテレビ番組や劇場で上映される映画、最近ではYoutubeなど動画サイトで大量に投稿されているCGMなどの動画も含めて、さまざまな映像が学習素材として教師データとなり生成AIに喰わされ続けて現在に至っております。

 その教師データについては、目下、既存の著作物を大量に学習させることの法的位置づけが問題となっています。単純な話、生成AIのサイトで「綾波レイ」の単語を入れると青い短髪で眼帯した細身の女の子が大量量産されることになるわけですが、こんなのは明らかに無許可で大量に喰わされた類似動画に「著名コンテンツ」の雛形として重みづけされ、ミームとして成立して類似のベクトルで生成されているわけですから、それは著作権法上どうなのよ、というのは当然ながら問題になっていきます。

 そして、我が国では18年改正著作権法でもAI開発目的でのデータ分析を可能とする第30条の4を導入が生成AI関連では切り札的扱いになっていますが、この規定が国際的な制度調和の中でどのように解釈・運用されるべきかが課題となっています。

 特に文化資産を教師データとして利用する場合、単なる情報としての価値を超えて、本来であれば、その文化的・歴史的重要性を考慮する必要があります。これは、単に許可するしないの問題じゃあないわけですよ(本来は)。著作権保護期間が満了した古典作品であっても、デジタルアーカイブ化された際の新たな創作性や、文化財としての保護の観点から、その利用には慎重な検討が求められます。

 一方、生成AIによる成果物については、その著作権の帰属や保護のあり方が議論の的となっています。現行の著作権法は「人の創作的表現」を保護することを前提としているため、AI生成物をどのように位置づけるかは複雑な問題です。特に、人間の関与度合いによって保護の可否や範囲が変わる可能性があり、これは実務上も重要な論点となっています。なるだけ、生成AIの利用に関してはしっかりと促進しつつ、権利関係がどう守られ、オリジナルを制作した人たちとの適切な許諾関係のもとに環境を作り上げていくのか、が問題となるのです。

 それゆえに、生成AIの学習データに含まれる著作物の権利者への適切な対価還元の仕組みも検討が必要です。特に、商業利用を目的とした場合、既存の著作権管理団体の枠組みでは対応が難しい新たな課題が生じています。

 さらに、国際的な観点からは、各国の制度の違いによる規制のアンバランスや、データの越境移転に関する問題も重要です。特に、海外のビッグテック企業による日本の文化資産の利用については、文化主権の観点からも議論が必要になってくるでしょうし、保護の枠組みを日本国内だけで作るのではなく、世界的な協調においてどう実効性あるものにしていくかが大事なんですよね。その辺のステークホルダーと規制、利用促進およびイノベーションのあり方は学んでいかねえとなあ、というのが今回のお題なのであります。

 デジタルトランスフォーメーションが進む中で、生成AIは避けては通れない技術となっています。文化資産の保護と技術革新の両立を図るためには、柔軟かつ実効性のある制度設計が求められます。本コロキウムでは、この複雑な課題について、法律、産業、文化の各方面からの専門的知見を結集した議論が展開したいと思っております。

 ご関心のある方は、ぜひ以下JILISコロキアムを主催しておりますJILISコンサルティングのサイトからリクエストを賜れればと存じます。よろしくお願い申し上げます。

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山本一郎(やまもといちろう)
神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント