【ネタバレなし】みんなで『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』を観て面白かったよの感想
日頃お世話になっておりますご協業先のご厚意で鑑賞チケットを何枚か頂戴しまして、これまた日々ご一緒している近隣ご家庭の皆さまご子息ご息女と拙宅山本家愚息らを束ねて映画館までれっつらゴーーであります。遠足気分で楽しかったです。
個人的には『ルックバック』を観に行きたかったんですが、事情が事情ですから仕方ねえだろ。
で、いろいろ取引させていただいておきながらこんなことを申すのは何ですが、わたし、原作の『僕のヒーローアカデミア』についてマンガの1ページも、アニメの1秒も拝見していません。いや、仕事で絡んでるんだからそのぐらい目を通せよと言われれば大変ごもっともなのですが、なんというか、マンガを読むと死ぬ病に罹っており、山本家の家訓でマンガ読まないんすよね。読み始めてドハマリすると仕事が全部止まるので、身の危険を感じて目を通さないようにしているというか。家訓と言いつつ拙宅三兄弟は『僕のヒーローアカデミア』はドハマリしてるんですけどね。勉強しろ。
そんなわけで前提知識ゼロで映画館まで訪問して、おっさんはおっさんらしく、世間的に無価値である自覚を持ち映画館の最上段のはじっこに陣取りメロンソーダ(L)をちゅうちゅう飲みながら最初から最後までしげしげと観たんですけど、なにこれ超面白いじゃないですか。まったくよく知らなかったんですが、素敵な世界観ですね。「次はお前だ」「えっ、俺ですか」みたいな。出だしから興味津々です。
ロングラン漫画の映画化で定番となっている「映画でしか出てこない特攻キャラ」が、今回は謎のお嬢様と武装した執事と素敵でお茶目な欧州ギャングの皆さんだったんですが、序盤から感じさせる、物語のキーとなるお嬢様の激しい地雷臭、そしてクソ女ムーブ、最高だったです。ギャングが下弦の月みたいに扱われてて可哀想。そして物語の最後に、言い残してきたことすべてが回収され、フルスロットルで女を前面に出して終わる。いや、それができるなら最初からやっておけよってのはナシでお願いします、感動したんだから。穢れた心を持つ私でさえ。
映画を観終わってから、一緒に出てきたリアルお嬢様から「おじさん、なんであれを最初にやらなかったんですか」って素で訊かれてしまいまして、俺だって分からねえんだよ。映画ってのはそういうもんなんだから疑問を持たずに素直に見物しとけと言いたい気持ちをグッとこらえて「人間、やっぱりイザというときにしか発動しない何かってのがあるんでしょうねえ」って毒にも薬にもならない適当な答えを捻り出した私は大人だと思いました。だてにジジイではありません。
道中、なんかいろんなキャラが『個性』を発揮してて、輝かしくて良かったですね。私も人生を通してああいうキラキラした感じの友情とか個性とかついぞ得られることはありませんでした。振り返ればその原点から深夜のドブ川を泳ぐような人生でしたよ。お前らもこの映画を通じて役割のある人生っていいな、集中して立ち向かえる物事があると素晴らしいなって思えることがひとつでもあればと思いますね。
なので、悪役マフィアの恍惚とした自負とか過剰なミーイズムには、ちょっと羨ましさを感じました。俺だってああいう人生を送りたかった。それに、あんだけ大きな要塞を駆動させられるのに、やろうとすることは先代のところに突撃することであって、別にそんなことしなくても他のやり方で充分本来の目的を達成できたはずなんですよ。本当に力があるんだから「俺がネクストジェネレーションだ!」って言ってればみんなそう思うじゃないですか。だって、さまざまな放送を乗っ取る電波ジャックするぐらいお手の物の『個性』をもってるんだもん。いきなり全員を敵に回さず、何割かは協調できる相手を見繕っておくとかさ。根回しって大事だと思うんですよ。私は。
でも、そうはしない。暴力で解決。やりたいことは、全力で中央突破。いいねえ、やはり漢の中の漢だと思いましたですよ。スカッとします。無駄と分かっていても、男には取り組まなければならないことがある。すべてを敵に回しても、俺はやるべきと思ったことをやるのだ。本当にいいんですよね、そういう「強いこの俺を見て」っていう純粋な欲望があるからこそ、この映画って「あいつを止めろ」という一点にすべてのエネルギーが集中して素敵なんですよ。分かりやすいし、見ていて楽しい。
この「何もしなければ完全に勝利できるシチュエーションなのに、無駄な動きをした結果、付け込まれて敗北する」って、特に『個性』も目立った友情も持ち得ないまま50年を生きてきた人間からしますと、目に涙を貯めて「分かる、分かるよ、力を持ったら誇示したくなる馬鹿いっぱいいるんだよね」という深い同情と共感を覚えるんです。最高だ、この作品。道中、なんか戦闘してるんだけど何してるんだかさっぱり分からないのが難点でしたが… そんなものは抜きにして、ずっと隠れてれば光を放つ要塞が勝手に周りを飲み込んでつけ入るスキもなく悪者の完封勝利で終わるはずが、悪手、失敗からのパワハラで組織が崩壊し、最後は孤独に戦い、見積もりは全部外れ、意味のない戦闘で挽回され、無事敗北して、世界は光に包まれる。建物は全部壊れたけど、まあいいじゃないかまた建設すれば。
破壊される建物の物件価値を積算しながら楽しく映画を完走出来ました。今度、自腹で観に行きたいなと思える傑作だったと思います。
そんなわけで、思いがけずいい映画を楽しめてホルホルしていたのですが、帰りしな拙宅兄弟どもが「3作目の映画が本当に傑作だった。今回の映画は、それに次ぐ作品だった」「点数で言えば85点」とか制作者からすれば脳の血管全部切れるぐらいの評論家ぶりを発揮しておりました。これだから目の肥えたガキは嫌いです。そりゃ日々勉強もせずYoutubeやAmazon Prime一日8時間も観てれば品評のひとつもしたくなるんだろうけど作る側の気持ちももっと汲んでやれと思います。
画像はAIが考えた『役に立たない個性を引き当てて生まれてきてしまい、ドブ川で半世紀生きてきた人が輝く未来ある子どもたちを引率して映画館に行く光景』です。