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晋遊舎『月刊MONOQLO』(紙のほう)での15年間の書評連載「ベストセラー切り捨て御免」がついに最終回

 最初頼まれたときは『月刊MONOQLO』より「1年間の連載で12冊の書評をお願いします」「おかのした」という感じでスタートした本連載、なんだかんだずーっと続き、15年近く経過し171回ぐらい連載したところで「他の連載も終わるんやが、さすがにお前ももうええわ(意訳)」ということで無事終了の運びでございます。

 晋遊舎さま、歴代ご担当編集者の皆さま、こんな私を長らくご起用くださいまして、本当にありがとうございました。心より御礼申し上げます。また、なんだかんだ拙宅山本家の家電(洗濯機、炊飯器、全自動食洗機など)やベビーグッズ、インテリアものなどは『MONOQLO』で品評されたベストバイを買い続けてきており、どれも大変満足至極でございまして、みんなこの辺ぜひご参照いただければと存じます。

 いいぞ、このサイトも月刊誌も。
 お前の人生に役立つぞ。

 で、思い返すと入籍前から連載していた仕事だったもんで、ほとんど結婚生活のすべてがMONOQLOと共にあったなあという感慨もあります。初めて家内とMONOQLO読んで買ったのは電気ケトルでした。15年経過したいまも、まだ実家で稼働中であります。

 さすがに最近は読書のペースが少し落ちてきましたが、私は15歳ぐらいからずっと読書ノートというものをつけていて、だいたい月に6冊から15冊ぐらいのペースでいろんなジャンルの本を読んできました。私の人生は、出版文化とともにあったなあという気持ちを抱くんですよね。

 テーマにもよりますが、もし商業媒体などで書評連載のご依頼があるようでしたらぜひご用命ください。

連載していてどうだったか

 実のところ、連載すると身近なところにいる書店のおっさんから編集ご担当さんまで、いろんな方から「書評でお取り上げいただきありがとうございました」とご連絡を頂戴するぐらいにはご縁がありました。

 なにぶん「すでに売れている本を取り上げた書評」なので、この連載で売れたのかどうかは分かりません。ただ、まれに著者さんから書評御礼の連絡をいただいてお目にかかることになり、先方にとっては私と付き合ったところで何の利益も無いのに定期的にお会いして10年とか、ご献本でのお付き合いが始まってから別の場所で作風の乱れを指摘したら悩みの相談が来たりとか、神保町の北沢書店でバッタリお目にかかって書評の御礼かたがた文壇バーで4時間付き合わされたりとか、いいんだか悪いんだか分からないイベントフラグも回収させていただきました。ありがたいことです。

 よく言われるのは「山本一郎は面倒くさい書き手と思っていたが、割とちゃんと読んで優しい書評を書いてくれた」って話で、私のパブリックイメージが非常に失墜していたことはよく理解できました。こんなに温和で穏やかな人柄なのに、誤解が広がっているというのは残念でなりません。

2020年 ネット発で売れる作家がさらに発掘された年

 そんなこんなで、直近5年ぐらいで本連載で取り上げた書籍を振り返ってみたいと思うですよ。

  • 山崎圭一 一度読んだら絶対に忘れない日本史の教科書 公立高校教師Youtuberが書いた SBクリエイティブ

  • 田端信太郎 これからの会社員の教科書 SBクリエイティブ

  • 李栄薫 反日種族主義 文藝春秋

  • 朝倉未来 強者の流儀 KADOKAWA

  • ブレイディみかこ ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 新潮社

  • ひすいこうたろう 人生最後の日に ガッツポーズして死ねるたったひとつの生き方 A-works

  • 堀江貴文 東京改造計画 幻冬社

  • 竹中功 吉本興業史 KADOKAWA

  • 燃え殻 すべて忘れてしまうから 扶桑社

  • 内田樹 サル化する世界 文藝春秋

  • 奥山真司 サクッとわかるビジネス教養 地政学新星出版社

 いま思い返しても印象に残る作風の本が多かった年だなと思いますが、燃え殻さんの『ボクたちはみんな大人になれなかった』や『すべて忘れてしまうから』など印象的な作風を引っ提げて出てきたあたりが素敵でやんしたね。品質に波があるあたりに抱えている何かを感じさせますが、好きです。

 一方、定番のブレイディみかこさんの作品で出色の本作以降もその方面のエッセイストとして盤石な地位を保ちつつ、切り札の多様性ネタが徐々に飽きられて次のテーマにゆっくりとシフトして言っているさまが興味深いなあと思います。

2021年 著者名で売れる、ネットで売る本がより栄えた年

  • 黒川伊保子 息子のトリセツ 扶桑社

  • 出口治明 自分の頭で考える日本の論点 幻冬舎

  • てつや 天才の根源 KADOKAWA

  • 白河桃子 働かないおじさんが御社をダメにする PHP研究所

  • 谷本真由美 世界のニュースを日本人は 何も知らない2 未曾有の危機の大狂乱 ワニブックス

  • 朝井リョウ 正欲 新潮社

  • マイケル・サンデル (著), 本田 由紀 (その他), 鬼澤 忍 (翻訳) 実力も運のうち 能力主義は正義か? 早川書房

  • 小林 武彦 生物はなぜ死ぬのか 講談社

  • 中藤玲 安いニッポン 「価格」が示す停滞 日本経済新聞出版

  • 佐久間信行 普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる~佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2019-2021~ 扶桑社

  • 高市早苗 美しく、強く、成長する国へ。ー私の「日本経済強靱化計画」ー WAC

  • 根来龍之、富樫佳織、 足代訓史 この一冊で全部わかる ビジネスモデル 基本・成功パターン・作り方が一気に学べる SBクリエイティブ

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 気力が尽きたので機会があったらまた書きます。クソが。

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山本一郎(やまもといちろう)
神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント