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SS note杯 『神様カフェ』

「あのカフェにね、神様がいるんだって」

春菜の戯言を信じるつもりはなかった。
けれども、毎年彼氏のいない春菜が、神様カフェとやらに行った途端、彼氏が出来たのだ。

偶々かもしれないが、本当かもしれない。
私は興味本位で、「神様カフェ」を訪れた。

店内はよくある普通のカフェだ。
私はメニュー表から、コーヒーとケーキを注文した。

カフェというには、静かすぎる。
お客は皆、コーヒー片手に、何かを黙々と書いているのだ。

一体、何なのだろうか。

ほどなくして、私のテーブルに注文したコーヒーとケーキが置かれた。
そして、最後に見慣れぬ紙を一枚渡された。

「こちら、当店の願掛けです。願い事を書いてその木箱に入れてください。うちの神様が叶えてくれますよ」
店員はそれだけ言うと、厨房へと戻った。

「母の病気が治りますように」

お願い、神様。
私は大切な願掛けを、テーブルの隅の木箱に入れた。

叶ったら、もう一度このカフェに来よう。
お店の隅で、誰かが笑った気がした。

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静 霧一/小説
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