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kawori《1》|甘酸っぱい宴をともに

 霧の向こうにモーヴ街が出現してから4周年。街がお祝いムードに包まれる中、いつもは入らない小道を歩いていたら、ささやかで甘酸っぱい宴の声が聞こえてくる。本展で初めてのご紹介となるkawori様が、水彩と色鉛筆、絵墨でやわらかく救いあげた小さな物語をご覧ください。

 どこからか聞こえる歌声に誘われて小道を抜ければ、菫色の花弁が一面を囲む小さな庭で、ティータイムが開かれていた。

 わたしが入ってきたら、野良猫や子鼠たちは隠れちゃった。瑞々しいラズベリー、踊るように咲くリボンに包まれた場所。甘いお菓子を食べながら、いつものように通り抜ける風に記憶のささやく声がする。

 背高のっぽの菫の花の影で、リボンをゆるやかに結んで、緑色に染められた服を着た小人さんの姿が見える。手に持っているのは、なんて大きなラズベリーでしょう!

 頬を少し赤らめて、楽しいピクニックの時間。今日は自家製の飲み物も持ってきた。さくさくのフランスパンに、刺激的なチーズ、心ゆくまで白ワインで一人、乾杯しましょう。

 レモンケーキには夢が詰まっている。

 初めて食べたあの日、菫の花の深紫に黄色の花弁をくちびるに載せて、ふわりとスポンジケーキがスプーンの上で居眠りすると、子供の時に憧れたあの感情が口いっぱいに広がった。これからこの街で過ごそうと決めた瞬間。

 耳をすましてみれば、モーヴ街から聞こえてくる声。初登場となるkaworiさまが紡ぐこれからの物語を楽しみに、甘やかな夢が小道を走る。

kawori|画家 →Instagram 
散歩と旅、カフェが好き。日常の街角、ナチュラルガーデン、古びた扉、薄暗い照明など...。心に残った風景の中に、いつでも静かな空想が広がっていきます。それを絵にしています。
X|@47U88

維月楓|詩人・研究者・翻訳家  →X
幼少期より言葉が織りなす世界に魅了され、現在は詩作を行いながら研究活動を行う。古今東西の女性・クィアの作品を読み解くことを通して、新たな生の軌跡を思想している。霧とリボンでは、エミリー・ディキンソン、ヴァージニア・ウルフの翻訳、詩作品「Tropica Utopia」「直線の鏡」などを手掛ける。



作家名|kawori
作品名|Botanical Tea Time

透明水彩・色鉛筆・アルビレオ水彩紙
作品サイズ|16.8cm×22cm
額込みサイズ|27.7cm×33.8cm
制作年|2024年(新作)

作家名|kawori
作品名|Cute Picnic

絵墨・透明水彩・色鉛筆・ストラスモア水彩紙
作品サイズ|17.8cm×12.8cm
額込みサイズ|27.4cm× 22.4cm
制作年|2024年(新作)

作家名|kawori
作品名|Viola Lemon Cake

アクリル絵具・パステルペンシル・色鉛筆・ジェッソ・ベニヤ板
作品サイズ|7.3cm× 10.2cm
額込みサイズ|10.8cm× 14.6cm
制作年|2024年(新作)

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