ヱリス|ヴィオレ・ア・ラ・モード
ヱリスの作品に初めて出会ったのは、いつだっただろう。
SNSに流れてきた少女の画像は、モノクロームの点描に象られ微かな微笑みを浮かべていた。微笑み?それは本当に微笑みだっただろうか。
目深に被さった厚い前髪は少女の顔を半分覆い、謎めいたその表情を露わにしない。観る人はそこに自分の中に在る少女を投影する。
モーヴ街初登場となるヱリス。銅版画、ペン画、ミクストメディアの立体作品と多彩な手法を用いる彼女だが、今回はアクリル絵の具による点描を駆使して、菫色とデザートの出会いを創り上げた。
バタフライケーキはイギリスの定番のお菓子で、フェアリーケーキとも呼ばれている。
切り取った部分を蝶の羽のようにカップケーキの上に飾りつけたケーキは、紫色のパンジーに囲まれて今にも飛び立ちそうだ。
*
フランス南西部にあるトゥールーズの名物は、菫の花の砂糖漬けである。
オーストリア皇后エリザベートに愛されたこの愛らしいお菓子を、ヱリスはその名前から結晶に見立てた。
グラスに1粒入れてシャンパンを注ぐと、泡がさらに細かく立ち昇る。その様子はまるで点描のよう。
*
菫に加えて薔薇やミモザ、どれもチョコレートとの相性はぴったり。
花束のようなデザートは、少女の夢のお茶会に相応しい。さてどれからいただきましょうか。
*
トゥシューズに憧れる可愛らしいマカロン。
蝶になりたいパンジーと、いつか一緒にピルエットを踊ることを夢みて微睡んでいる。
*
アラベスクのポーズから手を取り合った少女たちは、高く盛り付けられたデザートの器をバッカスの巫女のように掲げる。青紫と赤紫の少女の妖精は、互いに入れ替わりながらシンメトリーに踊り、紫という色が持つ二面性を体現する。
効果的に配置された点描は、色彩の深みを増し二次元に動きをもたらす。
菫色の祝祭の始まりだ。
夢や希望や祈りや願い、想いが砂粒のように集まり少女を形作る。
それは一瞬の後にはさらさらと風に吹かれて消え去ってしまうかもしれない。でも少女は消えやしない。フリルやレースのひだが織りなす濃淡の中に、決して明かされない前髪の謎の中に、少女は存在する。
ヱリスが紡ぎ出す物語は少女の夢の城なのだ。
*
*
*
*
作家名|ヱリス
作品名|Butterfly Cake
アクリルガッシュ・アクリル・ミリペン・水彩紙
作品サイズ|8cm×8cm
額込みサイズ|16cm×16cm
制作年|2024年(新作)
*
作家名|ヱリス
作品名|Crystallized Violets
アクリルガッシュ・アクリル・ミリペン・水彩紙
作品サイズ|7.9cm×12cm
額込みサイズ|15.2cm×20.2cm
制作年|2024年(新作)
*
作家名|ヱリス
作品名|To My Sweetheart
アクリルガッシュ・アクリル・ミリペン・水彩紙
作品サイズ|7.9cm×12cm
額込みサイズ|15.2cm×20.2cm
制作年|2024年(新作)
*
作家名|ヱリス
作品名|マカロンとトゥーシューズ、ある少女の夢
アクリルガッシュ・アクリル・ミリペン・水彩紙
作品サイズ|10cm×15cm
額込みサイズ|16.9cm×23.1cm
制作年|2024年(新作)
*
作家名|ヱリス
作品名|菫色のお菓子の妖精たち
画材・支持体|アクリルガッシュ・アクリル・ミリペン/水彩紙
作品サイズ|15.1cm×19.9cm
額込みサイズ|24.4cm×29.6cm
制作年|2024年(新作)
*
↓モーヴ街MAPへ飛べます↓