少女の聖域vol.3|トレヴァー・ブラウン|少女が少女で在るために
少女は戦う。誰のために?
少女は変身する。何のために?
少女は少女で在るために、魔法をかける。
ラバースーツに身を包み、クラゲのスカートを揺らしながら、呪文を唱えれば、もう怖いものはない。
思いつく限りの魔法のアイテムは既に手に入れた。古今東西、良きものから悪しきものまで。
3回目の開催となる《少女の聖域》のメインビジュアルを飾ってくれるのは、今回も引き続きトレヴァー・ブラウンの作品である。
可愛い、不気味、残酷、脆い、強か。少女のあらゆる側面をあるときはフェティッシュに、またあるときはユーモラスに描き出すトレヴァー・ブラウンの正確無比な筆致は、聖域の象徴に相応しい。
「魔法大全」のサブタイトルを以て、賑々しく登場したその姿。
まさにそれ自体が魔法の化身の如く、力に満ち溢れた堂々たるものである。笑う骸骨とリボンを着けた毒蛇、そして単眼の浮遊する魔物たちを引き連れて、印を結ぶ少女は、最強の戦士のようだ。
戦う相手は目に見えるものばかりではない。少女を縛り付ける常識や圧力、隙あらば組み込んで消費しようとする経済構造、年齢や性別に立ちはだかる壁。それら全てと戦い続けなければ、少女で在ることができないのは、間違っている。
窮屈な社会に喝を入れ、少女を少女のもとに取り戻そう。 トレヴァー・ブラウンの描く少女は、そのための護符となる。
少女の背後から放射線状に伸びる光線は、菫色のストライプ。まるで聖域に通じる小部屋の壁紙から放たれたようだ。
中央に輝く第三眼は、少女の虹彩と呼応して輝き、魔法の言葉を周囲に撒き散らす。
好きな服を着よう。華やかなアクセサリーを身につけよう。可愛いものを愛でよう。厚底の靴でこの時代を走り抜けよう。
いまこそ魔法で不在の少女を解き放とうではないか。
*
*
*
*
作家名|トレヴァー・ブラウン
作品名|Magik
油彩・キャンバス
サイズ|72cm×60cm
*額なし
制作年|2022年(新作)
*
*