少女の聖域vol.3|エンドロールと白い明日研究所|悲しみの形
綿菓子のような微かに甘い香りの霧を抜けると、白い森の中に小さな研究所が建っている。
そこではナタリー所長をはじめとする研究員たちが日夜、世界中の悲しみに向けてふわふわの魔法を送り出している。
エンドロールと白い明日研究所が創り出すぬいぐるみたちは、クマやウサギといったわかりやすい形をしていない。それは誰かの悲しみを埋めるために作られているからだ。
悲しみは心に歪な穴を開ける。その穴はそのままにしておくと、知らず知らずのうちに心を喰い荒らして大きくなってしまう。
だから研究所のぬいぐるみは、穴がそれ以上大きくならないように、その穴にすっぽりと収まるような形に作られているのだ。
研究所が生み出す魔法は優しい。
抱き締めるのに丁度良い大きめのぬいぐるみは、かたわらにいてくれるだけでいい。少女で在るために戦うことに疲れた時、その優しさに触れることで頑なになった気持ちがほぐれていくのだから。
不思議な形も菫色の飾りもそれぞれ異なる3体のぬいぐるみは、その姿に合った悲しみを抱える人のところに、研究所の魔法を届けるだろう。
決して居丈高に訴えることのないひっそりと深い悲しみを、ふんわりと埋めるために。金色の星のように輝く記憶を胸に、また歩き始めるために。
甘くて涼やかな杏仁豆腐は、どんなにおなかがいっぱいでもつるりと入ってしまう。
真っ赤なチェリーの代わりに、菫色のチェリーを乗せた小さなぬいぐるみも、ぴったり閉ざされた心の隙間からいつのまにか入ってきて、悲しみの替わりを務めてくれる。
悲しさに押しつぶされそうになった時、甘やかな霧を抜けて白い森の中の研究所を訪れてみるといい。
すぐに場所が見つからなくても大丈夫。ナタリー所長が悲しみの気配を見つけて迎えに来てくれる。
そしてそこではあなたの悲しみの形にぴったりと合ったぬいぐるみが、きっと待っていてくれるだろう。
どんな悲しみにも効く、ふんわりとあたたかな魔法をまとって。
*
*
*
*
作家名|エンドロールと白い明日研究所
作品名|かがやきの甘い記憶~すみれ色ed.~I
ムートン・ポリエステル綿・刺繍糸・ビーズ等
作品サイズ|高さ25cm×厚さ21cm
制作年|2022年(新作)
*
作家名|エンドロールと白い明日研究所
作品名|かがやきの甘い記憶~すみれ色ed.~II(3種)
ムートン・ポリエステル綿・刺繍糸・ビーズ等
作品サイズ|高さ15cm×厚さ7cm
制作年|2022年(新作)
*
作家名|エンドロールと白い明日研究所
作品名|もちもち杏仁豆腐ちゃん~すみれ色ver.~(2種)
ムートン・ポリエステル綿・刺繍糸・ビーズ等
作品サイズ|高さ12cm×厚さ7cm
制作年|2022年(新作)
*
*