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スウィンギング・ロンドン|河井いづみ《2》|呟声と時間

 時代の嵐が去った後も残り続けるモノ――。独特のノイズ感をもった鉛筆画から、じっと動かないモノの息遣いが秘かに聞こえてきます。

会場風景(以下同)

 衣装替えの混乱が終わったあと、人々の気配が充満する部屋。傾いたハイヒール、飲み干された空瓶、打ち捨てられた林檎。

 時間が止まったモノクロームの世界で、静物であるはずのモノたちがぬるりと生きているようにその存在を表している。呼吸を繰り返し、ふくらんだカーテン。来客を迎えようと、鷹揚に構えたソファ。

 現在でも、オークションを華やがせるそれらは、消えることのない熱狂を伝えます。収集するという行為は、騒乱を眺め、呼吸をしていた断片を、人々が消えても永続する何かを、見出そうとすることなのかもしれません。

 スウィンギング・ロンドンの代名詞であるユニオンジャック。ひとつの時代の象徴が、極限まで削ぎ落された美として提示される。サングラスであるというのに、なぜだかこちらが見られているように、どきりとする。

 瞳の中に、じわりと流れ出す歴史が織り込まれ、どこからか金色の叫声が聞こえてくる。

2作品からは、スウィンギング・ロンドンのスタイルに特徴的なノイズ感が、現れては消える断続的なリズムで流れています。

河井 いづみ|イラストレーター・アーティスト →HP 
鉛筆画やリトグラフによる独自のテクスチュアを生かした、躍動と静けさが同居する世界観が魅力。2003年より3年間フランス・パリのアーティストインレジデンス等で活動。現在は東京を拠点に、書籍装画、広告、ファッションやパッケージのイラストやデザインなど、幅広い分野で仕事をする他、国内外での個展やアートフェア参加など展示も多数行う。

維月 楓|詩人・英米文学研究者・翻訳家 →Twitter
幼少期より言葉が織りなす世界に魅了され、現在は詩作を行いながら英米文学の研究を行う。古今東西の女性詩人の作品を読み解くことを通して、彼女たちの人生の軌跡に敬愛を捧げている。また、モーヴ街の図書館《モーヴ・アブサン・ブック・クラブ》では司書を務めている。



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作家名|河井いづみ
作品名|パーティーのあと

鉛筆・金墨汁・アルシュ紙
作品サイズ|28.4cm×38cm
額込みサイズ|44cm×56cm
制作年|2022年(新作)

作家名|河井いづみ
作品名|見える世界

鉛筆・金墨汁・アルシュ紙
作品サイズ|15cm×17.5cm
額込みサイズ|27.5cm×33.5cm
制作年|2022年(新作)



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