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ヒルデガルトの小径|こうのかなえ|花園の秘密は少女の手の中に

 霧とリボン企画に初参加となる、こうのかなえ様の作品は、鮮やかな植物と幾層にも重なる暗色の背景が織りなす作品世界から物語が溢れ出てくるようです。

《ヒルデガルトの小径》展会場風景(以下同)

 少女時代から幻視が視え、8歳で修道院に入ることを決意したヒルデガルドが後世に遺した薬草学の知恵と、その秘密を受け継ぐ少女たちを繋ぐような作品をどうぞご堪能ください。

 一人花束を手にたたずむ少女。その周りを可憐なヒナゲシが囲み、純粋さを表すスズランがひっそりと揺れている。庭の影は、少女時代の絡まりあった感情の目覚めを思い出させる。そっと外から守られた花園の、彼女こそが番人。

 ケシ、スズラン、アザミ、シダ——薬草としても知られる草花。それぞれ異なる色を発散する植物からは、さまざまな効能が満ちる生命力が感じられる。光を湛えた季節の「目覚め」だけでなく、何かもっと恐ろしいもの、誰も見たことのない何かが始まる予感と畏怖に満ちた作品。太古の自然がもたらす癒しの力に満ちた庭は、魔女の残した秘密を風に揺れながら囁き続けている。

 伸びやかに育ち、風にひるがえり、光に遊ぶ草花は、少女の目を通したありのままの植物の姿。その瞳は、自分だけが鍵を持つ花園を見る、柔らかくも射貫くような眼差し。
 抱きとめる両手は、生きとし生けるものの一部である人間が自然の力に守られながら生きている姿にも、それを受け継いでいく少女たちの手にも見える。

 弾けるようなタッチが、ランプのように照らす植物の効能と毒々しさの両面を感じさせる。どこからかアラベスクの音色が響き、自然が織りなす唐草模様に魔法の力が浮かび上がってくる。

 木と戯れた何千もの生命たち。退屈なあの日、庭で寝そべっていたわたしにひときわ話しかけてくれた花。

 モノクロの世界で見つけるわたしだけの青い鳥。弾ける少女と花の力。

 今回記したのは、絵画作品が囁いてくれた物語の最初の一ページだけ。みなさまにはどのような世界が見えましたか?

会場風景写真|霧とリボン

こうのかなえ|イラストレーター・画家 HP
香川県出身。神奈川県葉山在住。植物など自然のものをモチーフに作品を描いています。

維月 楓|詩人・英米文学研究者・翻訳家 →Twitter
幼少期より言葉が織りなす世界に魅了され、現在は詩作を行いながら英米文学の研究を行う。古今東西の女性詩人の作品を読み解くことを通して、彼女たちの人生の軌跡に敬愛を捧げている。



作品販売期間
【7月9日(土)23時~11日(月)23時】

作家名|こうのかなえ
作品名|花と少女

クレパス・アクリル絵具・鉛筆・イラストボード
作品サイズ|26.5cm×18cm
額込みサイズ|37.8cm×28.7cm
制作年|2022年(新作)

作家名|こうのかなえ
作品名|庭の肖像

クレパス・アクリル絵具・鉛筆・イラストボード
作品サイズ|22.7cm×17.5cm
額込みサイズ|25.4cm×20.4cm
制作年|2022年(新作)

作家名|こうのかなえ
作品名|秘密の庭

クレパス・アクリル絵具・鉛筆・イラストボード
作品サイズ|22.2cm×17.2cm
額込みサイズ|25.4cm×20.4cm
制作年|2022年(新作)

作家名|こうのかなえ
作品名|ドローイング plantedシリーズ

墨・顔料インク・紙
作品サイズ|10cm×14.8cm
制作年|2022年(新作)
*額なし/シートのみ
*オンラインショップに全作品の単体画像を掲載しています

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