ヒルクライム――塩尻峠
資格の研修で塩尻へ行く。11月に登山を控えているので、トレーニングついでに自転車を走らせた。
自宅から片道22km。塩尻峠を越える。標高差は諏訪から塩尻峠まで268m、塩尻から峠まで319m。この高さを登って降りる。行きは7時30分に家を出て9時着、平均時速14km、帰りは15時30分に研修先を出て18時着、時速9㎞だった。
一
気温13度。寒くなってきた秋の朝、長袖のTシャツと七分丈のズボンで漕ぎ始める。岡谷の坂の下までは快調だったが、日蓮宗のお寺へ登っていく坂がいきなりきつい。200mも登れずに自転車を降りて押していると、坂の上の家の窓を開けるところだった若いお姉さんがお早うございますと声をかけてくれる。まさか自分に挨拶してくれているとは思わず黙って通り過ぎてしまったが、周りには誰もいなかったから何だか励まされたような気がした。
ここからずっと登り。道もよく判らず、北東方向に曲がればすぐに高速道路をくぐってやまびこ公園に出られるところを、反対方向に1kmほど迂回してしまう(と今地図を見て気づく)。この1.5kmを自転車で漕いだり押したりして最高点に着く。写真はその少し前で諏訪湖方面を眺めたもの。この雲に午後降られることになるとはその時はまだ想像していなかった。やまびこ公園から下って国道20号へ。いわゆる塩尻街道。一度下ったので20号はまだ頂上でなく、また2kmほどヒイヒイ言いながら登っていく。焼肉店が見えて歩道橋を過ぎたところが頂上であった。
ここからはずっと下り。このまま20号を走っても良かったが、片側二車線の車が危ないので、途中みどり湖の看板を見て左折。20号よりは細い国道153号、三州街道に入る。お寺の横には塩尻宿の看板もあり、古い街なのだと来る度に思う。研修会場の塩尻市文化センターに着いたのが9時。想定通りだったが、自転車のヒルクライム--hill climbは本当に登り9割、下り1割の体力気力でくたびれた。
(研修は無事に終わる。昨年来の研修仲間と楽しく学ぶことができたのだが、何と、リュックに入れたと思っていた着替えを忘れ、一枚だけ入れていた下着のシャツの上に、汗だくになったロンTを水洗いして絞り、着て研修に臨んだ。半日着ていたら随分乾いたが、乾いた後はやや汗臭かったから、同席した三人には申し訳なく恥ずかしい思いをした。)
二
帰りは何の予定もないから気楽にヒルクライムを始められる、と思って走り始めたのだが空模様が怪しい。30分もすると、153号を左折して20号に向かうあたりからざあざあと雨が降ってきてしまう。レインコートは持って来なかったので、まぁ濡れていくしかないと思い、スマホだけ脱いだ下着のシャツにくるんでリュックの奥に仕舞う。他に濡れて困るものはなかった。
上述の通り帰りの登りの方が50mほど高い(ことを後から知る)。20号の歩道を自転車を漕いだり押したりして少しずつ登っていく。雨の道に滑って危ないのは下りなので、登りはひたすら漕いだり押したりして1時間半ほどかかっただろうか、頂上の歩道橋の下で少し雨宿りして休む。
ここから岡谷の街に出るまでの下りが最も危険で、雨も強く、雫がグラスに反射して道が見えず、細い道には入れない。暫く慎重に、でもスピードは極力緩めずに走る。夕暮れで車からも自転車の自分は見えにくいだろうなと思う。街中に出て道が平らになったところでやっと一息つく。
あとはゆるゆると走るだけ。雨は変わらずに降り続き、パンツや靴下の先まで濡れそぼっている。乾いて汗臭かったロンTが腕から体温が奪われるのを防いでくれる。岡谷市長地(おさち)の見慣れた工場まで来て、あぁやっと帰って来れたと思う。諏訪湖畔に出るといつもの道で安心する。
延べ4時間、往復45㎞、平均時速11km。転倒することもなく帰って来れたことに愛車にお礼を言う。人力の先にある文明の利器、自転車は凄いなと改めて思う。そういえば名前を付けてない。初めて乗った原付バイクをくれた(豊島区から横浜まで取りに行った)あのお姉さんの名前は何て言ったか。思い出せたらその名前を付けるのが相応しいと思う。そんなことを考えながら諏訪の温泉に浸かる。
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