三角関数から可能な限り深掘りしてみる
序文
数学におけるどんな定理、公式も辿っていくと定義と公理にたどり着くというのを大学でやった(正確には定理は公理から論理的に導かれているということ)。これを一度も自分の手でやったことなかったので、何かを題材にやってみようかという思いつき。題材としては最近触れる機会があった三角関数の定理を採用。可能な限り関係する定理なども触っていく。また、あんまりとっ散らかってもあれなので、さっぱり終わる浅めverと、気が済むまでやる深めverで分けようと思う。
浅めver
三角関数の相互関係から三平方の定理まで
三角関数に関する定理の中に次のようなものがある。
$${sin^2\theta+cos^2\theta=1}$$
おそらく、三角関数の相互関係の中でも最も有名なものではないかと思う。
これは、直角三角形を用いた三角関数の定義と、三平方の定理から導くことができる。
直角三角形を用いた三角関数の定義は次の通り、次の図のような直角三角形を考えたうえで、次のように書ける。
$${sin\theta=\frac{a}{c}, cos\theta=\frac{b}{c}, tan\theta=\frac{a}{b} }$$
ここで、三平方の定理から、同じく図の直角三角形において、辺の値が次の式を満たす。
$${a^2+b^2=c^2}$$
ここで全体を$${c^2}$$で割ると、
$${(\frac{a}{c})^2+(\frac{b}{c})^2=1}$$
となり、これに上記の三角関数の定義から$${sin\theta=\frac{a}{c}, cos\theta=\frac{b}{c}}$$を適用すると
$${sin^2\theta+cos^2\theta=1}$$
三平方の定理の証明
まだ、三平方の”定理”なのでこれを証明していく。
次の図のような二つの正方形を考える
大きい方の正方形の面積Sは、各辺の長さの二乗で表せるので、
$${S=(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}$$
また、大きい正方形の面積Sは、小さい正方形の面積と4つの直角三角形の面積の和と考えることができるので、
$${S=c^2+4*\frac{1}{2}ab=c^2+2ab}$$
よって、
$${a^2+2ab+b^2=c^2+2ab}$$
両辺から2abを引くと
$${a^2+b^2=c^2}$$
となり、三平方の定理が証明された。
面積について
三平方の定理の証明で使ったものは
①面積の計算
②四則演算(とそれが満たす法則)
で、②の方は基本的に公理だと思うので、面積の計算の方をもう少し追ってみる。
一辺の長さがaの正方形の面積は$${a^2}$$で求めることができるが、
これも公式と呼ぶべきものだろう。では、面積というものはそもそもどういう定義かと探したところ、簡単なものとして次の定義が見つかった。
単位長の正方形の面積を単位面積とする
要するに単位をcmとしたときは1cmの辺を持つ正方形の面積を$${1cm^2}$$とするということ。
これを採用すると、単位長より長い正方形はこの正方形を敷き詰めたと考えれば、一辺の長さの二乗で表すことができるだろう。
例えば、一辺の長さ5cmの正方形があったとする。ここには一辺の長さ1cmの正方形が25こ敷き詰めることができるので、面積は$${25cm^2}$$となる。この数値はちょうど一辺の長さの二乗と同じなので、正方形の面積は一辺の長さの二乗で求められるということになる。
これで緩い議論ではあるけど、面積の定義と四則演算の公理から三角関数の定理までの道のりが辿れた。
深めver
三角関数の定義から三平方の定理まで
浅めverの三角関数だと、実はΘの定義域が0°<Θ<90°までしかない(これを外れると直角三角形が破綻するため)。なので、もう少しちゃんとした定義として単位円を用いた定義を使う。
原点からx軸の正の方向に伸びる半直線を角度Θ反時計回りに回転させたものと、単位円(半径1の円)の交点における座標を$${(cos\theta,sin\theta)}$$と定義し、tanは$${cos\theta\not =0}$$の条件下で$${tan\theta=\frac{sin\theta}{cos\theta}}$$と定義する。
この定義をしたところで、例の定理の証明をする。
$${sin^2\theta+cos^2\theta=1}$$
単位円と半直線の交点からx軸に向かって垂線をおろすと、直角三角形が出来上がり、この直角三角形の斜辺以外の各辺の長さはそれぞれ$${cos\theta,sin\theta}$$となり、斜辺が単位円の半径1と同じであることと、三平方の定理から直ちに導かれる。
三平方の定理の証明
ここは、浅めverとまったく同じ内容で行けるのでいったん割愛。ただ、調べたところ三平方の定理の証明はなんと105種類もあるとかなんとか。あまりに多い。一応こちらしか読んでない人のために、以下浅めverと同じ内容をコピペ。
まだ、三平方の”定理”なのでこれを証明していく。
次の図のような二つの正方形を考える
大きい方の正方形の面積Sは、各辺の長さの二乗で表せるので、
$${S=(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}$$
また、大きい正方形の面積Sは、小さい正方形の面積と4つの直角三角形の面積の和と考えることができるので、
$${S=c^2+4*\frac{1}{2}ab=c^2+2ab}$$
よって、
$${a^2+2ab+b^2=c^2+2ab}$$
両辺から2abを引くと
$${a^2+b^2=c^2}$$
となり、三平方の定理が証明された。
面積について
三平方の定理の証明で使ったものは
①面積の計算
②四則演算(とそれが満たす法則)
で、まずは面積の方から見ていく。
面積について、浅めverよりも深い内容を探していったところなんとルベーグ積分に行き着いた。まじかよ、無理だよ。ある程度漁ってみたけど案の定無理でした。ということで面積についてはとりあえず浅めverの内容で据え置きということで。
四則演算について
面積の計算に用いられるものは基本的に実数の範囲内であるとして、実数が満たす公理は次の3つ
①四則演算の公理
四則演算において許されている操作一覧みたいなもの。行列だとなりたたない律もある。
特に分配律は先ほどの計算であからさまに使われている。
②順序の公理
数の大きさが順番に並んでること。4より小さくて6より大きい数字とかいうわけのわからんものが存在しないという話など。
③連続性の公理
実数の数直線はどれだけズームしても途切れてるところを見つけることはできませんってイメージで理解してる。常にお隣に違う実数がありますよみたいな(実数は数えられないからお隣という概念がそもそも少し的外れだけど)。厳密な表現そのものを理解するのはバリムズ、上界だの最小上界だのやめろ。
とどのつまり実数で四則演算を行えることは公理としてよさそうなので、これで定理から公理までたどり着いたってことで良さそう。
終わりに
やばめなところはある程度早く引き上げることで、思いのほかすっきりまとまったような気がする。しかし、数学はやっぱり深堀りしようとするととんでも内容が出てくるから恐ろしい。そのうち太刀打ちできるようになったらいいな~(そのための努力はしない)。
あとこのnoteの内容は調べつつだけど、自力で書いた内容だから間違いがあってもよしなに。