最近読んだ本
上田秀人
辻番奮闘記 五 絡糸
藩主が密貿易に加担した証拠が、幕府の手に!?
若き辻番・弦ノ丞が平戸藩のために選ぶ道は!
藩の窮地を救うため、長崎で奮迅する辻番たちの活躍。
平戸藩士の斎弦ノ丞は、長崎警固の辻番。ある日、長崎代官から、先代藩主が関わった密貿易の書付の存在を知らされる。平戸藩は、島原の乱鎮圧に来た老中松平伊豆守に、交易で潤う内情を知られ、和蘭陀商館を奪われたばかりだ。藩の立場をさらに危うくする書付と考えた弦ノ丞は、家老に……。市中に集う牢人の狼藉や、密貿易を巡る幕府と藩の攻防に振り回されつつも忠義を尽くす若き剣豪の死闘!
戦端 武商繚乱記(一)
大坂・東町奉行所の同心、山中小鹿は、上役の筆頭与力・和田山の娘をわけがあることを承知で娶ったにもかかわらず、裏切られてしまう。妻の不貞を許せなかった小鹿は、義父の和田山に妻を公然と突っ返すという方法に及ぶ。これが原因で、東町奉行所内では、同僚たちからも距離を置かれて居心地がよくない日々を過ごしていた。鬱憤をはらそうと大坂の遊郭に足を向けたものの、なぜか客引きをされない。理由は、大商家が「総揚げ」すべての見世を貸し切っていたからだ。その商家の名は、淀屋。西国三十藩以上の年貢米を大坂へ廻送、売る権利を持ち、莫大な富を得ていた。淀屋に借金をする大名もあらわれ、参勤交代の折には淀屋に寄って挨拶をするほどの力関係に至る。幕府も忸怩たる思いで、ついに時の老中首座・土屋相模守が手を打つことに。
一介の同心・小鹿は、商魂たくましい上方の豪商と武士の沽券をかけた争乱に巻き込まれていく。
霹靂 惣目付臨検仕る(五)
幕政改革に邁進しようとする八代将軍・徳川吉宗の先兵として奔走する惣目付の水城聡四郎。「江戸城の頭脳」である奥右筆、徒目付、そして、「江戸城の監察」目付と手を入れようとしたが、逆に「陰謀」を逆に仕掛けられてしまう。手柄と褒められこそすれ、叱られるはずの行いで、なぜか聡四郎に謹慎が言い渡されてしまう――。人気作家・上田秀人200冊目となる
記念碑的作品。「惣目付」シリーズ、第五弾。
継ぐ者
織田信長が今川義元を討ち取った桶狭間の合戦の後、松平元康は今川家からの独立を目論む。
名前を家康と変え、妻の瀬名と人質になっていた嫡男竹千代を今川家から取り戻し、竹千代を信長の娘と結婚させて織田家と同盟を結んだ。
さらに姓を徳川と変えた家康は、元服して名を信康に改めた嫡男を岡崎城の守りに残して東進し、遠江を攻略する。
織田は西へ、徳川は東へ。徳川家の前途は洋々かと思われたが……。
桶狭間から家康の嫡男、信康自害までを描く。上田秀人作品には同じく『夢幻』がありますが、そちらに比べて本作は家康・信康の間は良好とは言えない描写。 信長に対する思いの差が親子でどんどん広がっていった事で最後の悲劇を生み出す。