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エンジェルボイス

時々、急に何年も前の事を思い出し

あれで良かったのか、と気になる時がある



結婚して地元を離れて30年以上になる


ある時、娘から勧められてSNSを始めた


高校の時の友達が出て来て繋がった

この友達とは

男女の友情は成立する、と私がずっと思ってきた相手だ

友達は私の親友の元彼である

当時、友達と私も仲が良かった

私達の間に恋愛感情は無かった

今でも無い

それが適度な距離を保っているのかもしれない

昔々、身長168cmの私が8~10cmのピンヒール👠を履くから一緒に歩け、と身長180cmくらいある友達と街を歩いたのを覚えている



SNSを見ている限りこの友達はとても幸せそうだった

ご夫婦とても仲がよく

趣味や旅行、外食、と羨ましい投稿の数々だった


ある時、友達からメッセージが届いた

ちょっと辛いことがあった。良ければ電話出来ないかな?

私は出掛けていたので、帰宅後遅い時間だったが電話した


友達は、突然奥さんが出ていったと言った

友達に相談できる身内はいない

本人はどうしたら良いのか何もわからない状況を一定期間過ごし、心身共に疲弊し、医師から誰か話を聞いてくれる人はいないかと言われ私の事を思い出したようだった

生きる気力を失くしていた

とりあえず話し相手になった

夫婦のこと

家族のこと

経済的なこと

迷子になっている友達の気持ちに一生懸命私なりの答えを伝えた

その連絡は数ヶ月続いた

SNSで見ていたキラキラした生活の裏には経済的に追い詰められた現実があった

収入はどうしようもないので

支出を見直した

死んだ時自分は困らないが、入院した時の為に生命保険は継続するように伝えた

友達は「スポーツクラブは続けて良いか」と聞いてきた

何もかも手離すとストレスばかりになるから、続けられる間は続けて良いんじゃない?と答えた

そのスポーツクラブでスポーツに打ち込む事と、人と会話をする事によって気分転換になっていたようだ

しばらくして、金銭面は整理し何とか落ち着いた、後は頑張れるだけ頑張るしかない、と連絡してきた


ある日、SNSに投稿があった

ホームセンターで買い物をしている様だった

農薬を飲んだら楽になれるか

といった感じの投稿だったと思う

私は普通に電話した

こっちは良い天気だよ。何してるの?、と

友達は農薬を飲んだら楽になれるのではないかと思っていると言った

死にたくなる事あるよね

私もあったよ。今でも死にたくなる事あるよ

で、死にたくなった時にどうやって死のうか考えたんだよ

山で遭難すると救助隊の人とか地元の人に迷惑掛けるかもしれないでしょ

電車に飛び込んだら電車を止めるから1分いくらとかで請求されるって聞いたし

私は人に迷惑を掛けるかもしれない自死について話した

別に引き留めようと強く思っていたわけではない

友達は死にたいくらい辛いのだ

生きている事が辛いのだ

それを私に引き留める権利はない


でも友達は今も生きている

そして、それ以来私の事をエンジェルボイスと言うようになった

それはきっと死にたいくらいの辛さから少しずつ回復しているのかもしれない

友達は私に、命の恩人だ、困った時には何でも言ってくれ、と言っていたが特にお願いする事はなかった

ただ1度だけ、母が入院しているので母が急変した時に時間帯によっては空港まで迎えに来てもらえないかと連絡した事がある

結局、母は私が大阪に滞在中に逝ってしまったので友達の手を煩わせる事はなかった

友達が母の通夜に来てくれた

元気そうで良かった、と言うと

返答に困っていた

この時から私は友達が死ぬことを引き留めて良かったのか自問自答するようになった

私は余計な事をしたのではないか

苦しみ、辛さを継続させているだけなんじゃないか

いや、本当に死にたいなら私が何を言っても死んでたんじゃないの?

いや、機を逃しただけかも…

まあ、どんなに私が自問自答したところで答えは出ない

近い内に本人に聞いてみよう

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