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御裸イ坂〜哀捨てNOTE 031/小説+詞(コトバ)

「それで、どうしようもなくて、そのままそこで寝ちゃって、しばらくしたら警察が来て、クルマを砂浜から出してくれたよ」

「JAFFを呼べばよかったのに」

「眠くてサ。どうでもいいやってカンジだったし…」

「なるほどね。それで? 早く本題に行ってよ」

「ああ。それで、急に腹が減ってるのに気がついて、すぐ近くの喫茶店に入ったんだ」

「『哀捨てノート』?」

「そう。そこのマスターが変わったHiToで、初対面のオレにいろんなことを話してくれたんだ」

「類は友を呼ぶ」

「オレは変わり者じゃないよ」

「そうかなァ。ま、そうしておいてあげるから、早く次」

「え~っと、かいつまんで言うと、マスターは、若い頃いろんな国を旅して回って、アメリカへ行ったときに芝居を観て、それがすごく面白くて、すぐに自分も役者になっちゃったんだってサ」

「へぇ、たしかに面白いHiToだね。それで?」

「うん。それで、日本へ帰って来てすぐに自分の劇団を旗揚げして、かなりの人気だったらしいよ」

「すっごい! エキサイティングなHiToなのね。逢ってみた~い」

「今、入院してるよ」

「うん、知ってる。アタルから聞いた」

「そっか。それで、オレもアメリカへ行ってみたくなったんだけど、それより先に芝居をやってみたくなっちゃって、マスターの知り合いの劇団に研究生の見習いとして入れてもらって、現在に至る」

「え、それだけなの? 役者になりたいだけなの?」

「あ、そうか。だから金を貯めて、いつかオレも自分の劇団を旗揚げしたいと思っています。以上」

「ふ~ん。そっか、そっかァ。當の劇団に、私も入れてくれる?」

「もちろん! いつになるかはわからないけどね」

「うん。私も協力するよ」

「ありがとう」

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