旧暦の月の名前
1月*睦月(むつき)
「睦」は、「仲睦まじい」「親睦会」などという言葉でわかるように、「親しくする」「寄り添う」「寄り合う」という意味を持っています。
お正月。
地方に出稼ぎに行っているお父さんや、他県の学校に通う子供、また、親戚たちが新年の挨拶に集まってくる月なので睦月という名前が付けられました。
2月*如月(きさらぎ)
「如」は助詞として使われ、読みかたは「ごとし・じょ」です。如月と書いて「きさらぎ」と読むには無理がありますし、意味もわかりません。
実は、如月は中国で使われている2月の名前だったのです。
読みかたの「きさらぎ」には本当は「衣更着」という漢字があてられます。春の足音が聞こえてきそうではあるけれど、まだまだ寒さが残っていて、衣を重ね着する(衣の上に更に着る)ような月であるという意味です。
漢字は中国で使われていたものを用い、読みかただけ意味がわかるものを採用したのですね。
3月*弥生(やよい)
「弥」は表外読みでは、「あまね(し)・いや・いよいよ・つくろ(う)」などと読みます。旧漢字は「彌」です。
これは、弓を放つ前にいっぱいに引いて張り詰め、つかんだ指を離すと、矢は遠く飛んでいき、弓は緩みます。この時の緩んだ様子を表しています。
そこから、どこまでもいきわたるというような意味になりました。
「弥生」は冬を過ぎて、いよいよ草や新芽が生えてくる、そんな意味を持ちます。
4月*卯月(うづき)
これはわかりやすいですね。4月には卯の花が満開を迎える月なので卯月。
では、卯の花ってどんな花でしょう。多くの人は「卯の花」というとおからを思い出すのではないでしょうか。これは豆腐のしぼりかすのおからがこの白い花の咲いている姿と似ているために後からつけられた名前です。
卯の花の植物としての本当の名前は、「ウツギ」です。幹の中が空洞なので、空木という当て字もあります。ウツギの花が略されて「ウの花」となったのかもしれません。「ウ」に「卯」があてられたのは、この花の色が兎の白を連想させたため・・・というのはわたしの推論です。
5月*皐月(さつき)
「さつき」の由来には諸説あります。
1つには田植をする月であることから「早苗月(さなえつき)」と呼んでいたものの略であるという説。他には、稲を植えることを古語で「さ」と呼び田植えの月ということで「さ」月となったというものです。
早月(さつき)という漢字も使われますが、多くは皐月と書きます。「皐」には「さわ・水辺・岸辺」といった意味があるので、水田からの連想で使われたのでしょう。
ちなみに、植物の皐月も、5月に満開となります。躑躅(ツツジ)にそっくりですが、ツツジの雄蕊が5本以上あるのに対し、サツキは5本です。花の咲き方も、ツツジは一斉に開花しますが、サツキはちらほらと咲きます。
6月*水無月(みなづき、みなつき)
昔、水無月の意味は「田んぼに水を引くので水路の水が無くなるから」なんて教えられたことがありますが、これは間違い。無(な)は「の」の意味を現わす表音文字で、水が無いのではなく、水の月という意味です。
田んぼに水を引く月という意味です。
6月は梅雨で雨が多いから水の月ともいえますね。
7月*文月(ふみづき、ふづき)
これにもいくつか説があります。1つは稲の穂が実る月という意味で「穂含月(ほふみづき)」が略されて(「ほ」が取れて)ふみづきとなった説。しかし、これだけでは「文」の漢字をあてられた意味がわかりません。
もう1つの説は、七夕に書物を干す年中行事があり、書物(文)をひらく(披く)「文披月(ふみひろげづき)」と呼ばれるようになり、それが略され「文月」になったものです。
現代の暦では、7月はまだ梅雨の時期ですが、旧暦だと今より約一か月遅いので、梅雨が明けたこの時期に、梅雨の間に湿ってしまった書物や着物を干ししました。土用干しという言葉もあります。
また、虫干しともいいます。これは、書物や着物の場合に風通しのよい場所に広げて陰干しすることで、虫やカビがつくことを防ぐために行ったためです。書籍の場合は曝書(ばくしょ)ともいいます。
8月*葉月(はづき、はつき)
8月は葉っぱが生い茂るから「葉月」・・・と思っている人は意外に多いのではないでしょうか。しかし、現代の暦と旧暦は約一か月の差があります。つまり、葉月は現在の9月です。温暖化のせいか、ここ数年猛暑の夏が続き、9月でもまだ30℃を超える日が多いのですが、旧暦のこの頃には、秋風が吹き始め、木々の葉が落ち始める季節でした。
それで、葉落ち月(はおちづき)。これが短くなって葉月となった・・・という説が有力です。
9月*長月(ながつき、がづき)
これは多くの人が知っている意味で正解だと思います。夏至から立秋を過ぎ、だんだんと夜の時間が長くなってきたことを感じる月です。夜長月(よながづき)が短くなって、長月になりました。
10月*神無月(かんなづき)
これも、全国の神様が出雲大社に集まり、各地の神社の神様が留守になる月と習った記憶があります。しかし、6月の水無月と同様に考えると、「神の月」になります。
旧暦のこの頃には稲刈りも終わり、豊作に感謝して神様にお礼を込めて秋祭りが行われました。神様を祭る月という意味だと考えられます。
11月*霜月(しもつき)
わかりやすいので説明は不要でしょう。霜の降り始める月。霜月です。
12月*師走(しわす)
これも多くの人が聞いたことがあるでしょう。「師匠といえども趨走(すうそう)する月」という意味です。
「師」とはお坊さんのこと。「法師」の「師」です。
普段、お坊さんが走るイメージはないですよね。厳かに歩き、ゆっくりと座る・・・。しかし、昔は、年の瀬に、お坊さんを招いてお経をあげてもらう仏事を行う家が多かったのです。それで、お坊さんが東西に忙しく走り回ることとなり、「師趨(しすう)」から「しはす」になったようです。 この説は、平安時代末期の古辞書『色葉字類抄』に「しはす」の注として書かれています。