昔、突如としてあらわれた〈夜トカゲ〉と名乗る魔法使いたちが世界を支配していた。 魔王は同じ種族である〈夜トカゲ〉の反逆者たちによってたおされ、今世界には、少しだけ魔法の残りが漂っているだけになった。 魔王に対抗した〈夜トカゲ〉たちは、今も人間界にかけられた魔法を解くため、旅をしているという伝説がある。 オリバは今、廃墟の城の前に立っている。城のまわりは水でかこまれ、門まではようやく渡れる橋だけだった。 橋を渡って門まで行くと、扉がゆっくりと開いた。〈夜トカゲ〉の
灰色の霧が立ち込める森の奥深くに、少年ロウの家がある。銀色狼のウォルも一緒に暮らしていた。 うつくしい毛並みの凛とした姿だけど、少しおっちょこちょいなウォルのこと、ロウは大好きだった。 ある朝、ウォルが寝床でそのまま亡くなっていた。 (人間の年齢で百歳を超えたんだ、無理もない) ロウは思い、狼の頭をなでた。 横たわる体は痩せて、毛並みもつやがなく、半分以上が禿げていた。 悲しみに暮れたのもつかの間、玄関が開いて体の大きな人が入ってきた。 「私の名はギース。銀色
noteに投稿し始めて一年が経ちました。 まだまだ勉強することがたくさんありますが、自分と同じつらさを抱えた人たちに届けられるように、この先もあせらずじっくりと書いていこうと思います。 長編小説も書きたいです。 またどうぞよろしくお願いします。
テムの住む世界にはサンナと呼ばれる種族が暮らし、テムも〈サンナ族〉の一人だった。 ただ、唯一の友だち、ラスは〈ムルナ族〉の末裔で、その種族は代々短命の種族だった。 テムは毎朝自分の畑で穫れるおいしい野菜や果物を売って生活している。 ある日、店にラスがやってきて野菜と果物を買っていった。ラスの肌も髪も真っ白で、赤髪のテムとは真逆の姿をしている。町の人たちも、そんなラスを気味悪がり、哀れな目を向けていた。 「ラス、そのリュックサックどこに行くんだよ」 テムはいぶかし
ドロシーは今暗い森の中にいる。そして目の前には、二階建ての家ほど巨大で、森の木々よりもさらに黒い者がいた。 「怪物……」とささやき、一歩後ずさろうとしたが、体が動かなかった。 ドロシーの金色の髪が風になびくと、怪物はまばたきをして首を少しのばしてきた。獣の匂いが漂い、低く喉を鳴らす声が聞こえる。針のように四方八方に飛び出すように生えた毛が、月の光に金色に淡く光っていた。 逃げよう。そう思い、村へ向きを変えようとした。 (でも、私……村に帰っても独りだ) そう思った
灯野村に夏祭りがやってきた。北の国の夏祭りはあたたかく、すずしい。 食卓には瑞々しい野菜や果物と、じゃがいも料理がならび、とっておきの魚を焼いて、梅干しを入れたおにぎりを食べる。 灯野族の少年フウトは夕方、夏祭りの準備から抜け出し、針葉樹の森を歩いていた。 村のほうを振り返ると、たくさんのテントに明かりがついて、ランタンの火がゆれている。 もう少しでキャンプファイヤーが焚かれる。そして毎年恒例の歌があとちょっとではじまる。 その歌が、残る雨粒の匂いと小さい生き物
前にテレビで見たトルクメニスタンの街並みに圧倒され、壮大な建造物にほんとうに地球なの? とどこかまったくちがう星の世界のようでびっくりしました。 びっくりするくらい人のいない静けさに見入ってしまいました。 でもちゃんとインタビューをうけている人たちもいて……こういう街が同じ地球にあるんだなと。正直、1時間ではたりなかったです。 ちょっと話がズレますがヨーロッパの街並みが似ているように、地球もどこかの星の兄弟なのだと聞いたことがあります。金星だったかな……。
ラベンダーもどこか他の星に咲いているのかしら。この子の頭のようにふわふわしています。まだ早いですが、季節の花でした。
本を読んでいると度々思う。ぼくはこの主人公の未来が見えるぞ、と。 べつにそれは特別なことじゃなくて、単に物語のページをめくれば、ほら、主人公の行く先がわかるって話。 でも、主人公からしたら当の本人は自分がこの先どんな目に会うか、だれと出会うかなんてわかりっこない。そう考えると不思議だ。 ただ、それが「ぼくの未来はなぜ見れないんだろう」につながる時、ちょっと体が重くなる。 つまり、ちょっとむなしくなる。 実は、これはほんとうにあった話なんだけど。前に、はじめて出会っ
きららと申します。 春になりましてとても眠い日々が続いております。 しかし冬のほうが眠かったです。たぶんずっと眠いのでしょう。 最近書きたいものですが……さて次はなにを書こうかとアイデア探しの毎日です。 毎月noteには短編小説を書いてまして、エッセイやその他記事もはさみつつ創作活動しています。 いままで小説を(短いですが)書いたはいいものの、どこかで発表するとしたらどこがいいか、応募などしてみたらいいのかしらなど考えていましたが、「あ、noteというものがあるの
ポロンは自分の住んでいる国が好きじゃなかった。 「だってすべてが真っ黒なんだもの。ね、パール」 ポロンはベッドに置いてあったぬいぐるみを引き寄せつぶやいた。名前はパール。パールはポロンと同じ三角の耳と小さいまるい目をしている。ポロンは全身真っ黒だけど、パールはオーダーメイドで真っ白に作ってもらったのだ。 「今日も雨風がひどいね。絵本で読んだ明るい火の玉ってほんとうにあるのかな」 窓は厚く作られているけれどガタガタと鳴るし、時おり貝殻のようなものが窓にあたる。町のゴミやそ
ギリシャって神秘的な国だ。 世界史で最初に登場した主役級に存在感のあった国だけれど、いまだに遠い遠い国で不思議で、ミステリアスな国でもある。 そこは地球ではない異世界のようだ。 エメラルドグリーン、ターコイズブルーの海。船を出して進めば、この世に存在しない未知の世界ときっとつながっているだろう。 以前、『世界遺産』という番組でギリシャのミストラを特集していた。 ペロポネソス半島南東部のラコニアという場所に存在する巨大な天空都市。 街は中世の建物がそのまま残されて
太陽の王子アロンは生まれた時にはすでに、森の中にたたずむ金色にかがやく城に住んでいた。 〈大陸モノ〉という種族に生まれたアロンは太陽の色の毛並みをして、細長い尻尾がある。尻尾の先は羽箒のようにふさふさしていた。 アロンは夜になると城の窓から金色の月をながめた。 「本に載っていた。夜をつかさどる生き物がいるって。会ってみたいなあ」 すると、目の前の森が消えて、まったく違う別の景色が広がった。 感覚で言うと、ベッドで眠る直前に天井がぼんやりと消えて、気がつくと夢を見ている
北欧と聞くと遠い国で、絵本の世界のような場所。 フィンランドは行ったことないけど、大好きな国だ。小さいころから知っているムーミン、妖精や小人がいそうな神秘的な森、日本にもなじみのあるサウナ発祥地、雪景色、サンタクロース。 スウェーデンの夏至祭は一度は見てみたい。コーヒーブレイク、パンケーキにシナモンロール。 ノルウェーの広大なフィヨルドは冒険が始まりそうな予感。有名なアニメ映画のモデルになったお城と教会。 遠い北欧と日本。日本の田舎町の冬は眠ってる生き物と土の匂いが