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掌編小説【供養】♯毎週ショートショートnote
お題「失恋」「墓地」
【供養】(410文字)
街はずれにその墓地はあった。
N子がその墓地に埋葬されたことは知っていたが、妻が死んで独り身になったことでようやく訪れることができた。N子とは三十年以上も昔、忍び逢った仲であった。
N子の墓にたどり着くと女がいた。娘…?いや、彼女に子どもはいなかった。
目が合った女に、僕は軽く会釈した。
「こんにちは。僕はN子さんの知人で…。ご家族の方ですか?」
女は首を横に振った。
「いいえ。ここは『失恋墓地』。ここにあるのは恋を失って死んだ女の墓ばかり。私はこの墓地の墓守です」
僕は言葉を失った。
「死を招くほどの恋情は、とても激しいものですわ。私は行き場を失くした彼女達を供養しているのです」
女はN子の墓の前で目を閉じて手を合わせると、こう言った。
「…N子さん、ずっと待っていた方ですよ」
その瞬間、心臓が激しく痛み、僕は墓石に倒れ込んだ。
「最高のお供えものね。N子さん、どうぞ召し上がって」
(うれしい…)
N子の声が聴こえて、僕は意識を失った。
おわり
(2023/1/17 作)
上記の『たらはかに』様の1/15~1/21のイベントに参加させていただきました☆
こんなお供え物…、どう召し上がるのやら(;・∀・)書いててコワイわ。
それにしても毎回、他の方の書かれた作品を拝読するのも楽しみです☆
創作って自由!たのしいですねぇ。
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