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SS【金色の舟】

小牧幸助さんの企画「金色に」に参加させていただきます☆

お題「金色に」から始まる物語

【金色の舟】 
(1030文字)


金色に光る特等席に俺が座ろうとすると、
「金色のふね!」
そう言ってお前は俺を押しのけて、ちょこんと座った。
ちぇ、しょうがねぇなぁ、譲ってやるよ。
窓から斜めに差し込む陽の光が、青い座布団の上に舟のような形の陽だまりを作っている。

「その舟、どっかに連れてってくれるのか?」
仕方なく日陰の方に座り直して俺はたずねる。
「んとね……、ハッピーマーケット!」
ハッピーマーケットは、隣町にある少し大きめのスーパーだ。
夢のない答えだなぁ、舟で行くところかよ。
「ソフトクリームがあるんだよ」
前に食べた時のことを思い出したのか、お前はニコッとする。
「食いたいのか」
「うん……」
連れてってやれなくて、わるいな。

陽だまりに、レースのカーテンの影が揺れている。
「あ、波がきた」
なるほど……風でゆらゆら揺れる波か。
お前も舟の上でゆらゆらと体を揺らしている。
「この舟で、もっと遠くにもいけるかなぁ」
お前がうつむいて小さくつぶやく。
俺は聞こえないフリをして欠伸をする。

お前はうつむいたまま、ゆらゆらと体を揺らし続けている。
一瞬、大きな風が吹いてレースのカーテンが高く巻き上げられる。
金色の舟が強く光る。
お前は眩しいのか、眠い時みたいに両手の甲で目を覆う。
両肘が左右にピンと張られて、白い腕が天使の羽みたいに見える。
お前は目を覆ったまま動かない。
泣いてるのか……?

ガチャリと音がして玄関が開いた。
「ただいまー。今日はごめんなー」
まったくなにやってんだよ、こんな秋晴れに休日出勤なんてさ。
俺は首をぐるりとめぐらせてオヤジを睨む。
「そんな目でみるなよー」
「パパ、おかえり!」
お前は両手をパッと下ろして笑う。
目尻に水滴が光っている。
「いい子にしてたか?」
これ以上いい子なんて、いねぇよ、バカ。

「今夜は外に食べに行くか、ハッピーマーケットで買い物もして」
「行く!」
ソフトクリームも食いたいって、ちゃんと言うんだぞー。
俺は二人が出かけたあと、もう舟とは呼べないくらいに薄っぺらくなった陽だまりに移動して座ると、ウーンと伸びをした。
ああ、まだあったかいなぁ。

暗くなりかけた部屋の隅に、かあちゃんの影がボンヤリとみえる。
「いつもありがとうね、クロ」
どういたしまして。
影がやさしく俺の顎をなでる。
俺はゴロゴロと喉を鳴らす。
「これからも一緒にいてあげてね。あたしはもう行くから……」
わかったよ、かあちゃん。心配すんな。

陽だまりが完全に消えると、かあちゃんの影も消えた。
金色の舟に乗っていっちまったのかな、天国まで。


おわり

※最初に書いた時、お題を間違えてました。笑
『金色』から始まる物語を『金色』だと思い込んで……
だめですね~、まだまだリハビリ中💦
でも三連休のおかげで締め切りが今日ということで、ナントカ直せましたー。(;・∀・)ありがとうございます……

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