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SS【反抗】#シロクマ文芸部

小牧幸助さんの企画「爽やかな」に参加させていただきます☆

お題「爽やかな」から始まる物語

【反抗】(761文字)


『爽やかな』に続く適切な言葉を三つ書きなさい。
そんな問いが出題された。
三時間目の国語のテスト。

風、笑顔、朝、ってところかな。
解答欄に書きかけて、なにかが私の手を止めた。

この問いに正解・不正解はあるの?
なにに対して『爽やか』と感じるかは、人それぞれ。
そもそも『適切』ってなに?

普段は、社会の『適切』と折り合いをつけている優等生のちいさな反抗。
私は、まず他の問題を全部解いた(優等生のかなしい性)。
残り三十分。
さて、この問いについてゆっくり考えよう。

まず、適切とされるものは退屈だ。
爽やかな風、爽やかな笑顔、爽やかな朝。
退屈きわまりない。
怒りすら覚える。

だから代わりに、不適切と思われる言葉を当てはめてみる。
爽やかな裏切り、爽やかな怒声、爽やかな殺し合い、とか?
これ、解答欄に書いたら問題児だと思われるかな。
私はちょっと楽しくなってウフフと笑う。

時々、優等生ではないクラスメイトが突拍子もない答えを言うことがある。
それは、私なんかには到底思いつかないようなことだったりする。
先生は苦笑し、クラス中が大爆笑する。
私はそんな時、心底悔しい。
その後に先生にあてられて正解を言うと、クラスはシンとなる。
優等生はつまらない、つまらない、退屈極まりない。

くそぅ、もっとないかな、不適切な言葉。
爽やかな悪口、爽やかな暴力、爽やかなイジメ。
いいぞ、いいぞ。
でもなぜかさっきほど楽しくない。

その時、先生が私の隣を通り過ぎた。
と思った瞬間、足を止めた。
胸がドクンとする。
私の答案用紙を見ている?
爽やかな、の解答欄だけが空白のテスト用紙。
最も簡単な問いだけが残っているのを不審に思ったのかもしれない。

鉛筆の先を空白の解答欄にあてる。
先生はゆっくりと歩を進める。
私は解答欄を埋める。
そして静かに鉛筆を置く。
チャイムが鳴る。


爽やかな反抗の時間が終わる。


おわり

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