地域包括支援センターについて
地域包括支援センターとは
地域包括支援センターとは、介護保険法115条に定められた『高齢者のなんでも相談窓口』です。
基本的には中学校区に一つはあります。地域によって「熟年相談室」「高齢者相談センター」「福祉相談センター」など呼び方は異なります。私が記載する内容では、名称は『地域包括支援センター』で統一します。
地域包括支援センターには『主任ケアマネジャー』『保健師または看護師』『社会福祉士』そして『認知症地域支援推進員』がいます。専門職が介護・医療・権利擁護の相談を承ります。
どんな相談に乗ってくれるの?
地域包括支援センターでは、本当になんでも相談に乗ります。
介護のことはもちろん、成年後見制度のこと、ご近所トラブルなどなど。私が勤めていた場所では、とある高齢者の方の家の木が道路に迫り出してきているからなんとかしてくれ、なんて相談もありました。
ただ、これら全てを地域包括支援センターの職員が解決するわけではありません。あくまで『相談』窓口です。警察や行政に連絡した方がいいなと判断した時は、そちらに対応をお願いすることがあります。
先ほどのご近所トラブルを例にあげ、地域包括支援センターの流れについてお話しします。
あくまで、私が勤めていた地域包括支援センターでの動きを想定したものです。地域により動きや支援は異なりますので、一例としてご覧いただければと思います。
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ご近所からの一報(相談については無料。秘密厳守です)
「足腰が悪くなってきている一人暮らしの男性。高齢者。何度木を切るよう話しても聞いてくれない」
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ご様子伺い(相談内容から、対応する職員を決め訪問します。この場合は、健康面の心配と認知症の懸念があるため、保健師と認知症地域支援推進員が訪問すると仮定します)
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家の中は雑然としていて、食事もコンビニおにぎりだけで満足に食べられていない様子。夏なのにこたつが出たままである。お風呂に入っていないのか、少々異臭もする。家の中では壁を伝って歩いている。病院には高血圧の薬だけもらいに行っている。
(栄養状態の悪化。季節に合った生活ができていない。清潔保持ができていない。雑然とした室内での伝い歩きは転倒リスクが高い。病識の欠如が見られる)
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保健師はバイタル測定やかかりつけ医と連絡を取り連携。
認知症地域支援推進員は、必要に応じて認知症専門医受診の同行などを検討する。
本人の了解が得られれば、配食サービスなどの手配。
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大体初回の訪問で、このくらいのことはやります。
この例の場合はご本人様がご自身でかかりつけ医に受診できておりますが、受診ができていない・身体的に難しい場合は、訪問診療医を調整する場合があります。
大切なのは、『介護予防』
では、何でもかんでも介護サービスに結びつければいいかと言うと、そうではありません。
2025年には、団塊の世代が後期高齢者となり高齢者人口の増加が懸念されます。現状の介護保険の仕組みでは、高齢者の方全員に介護サービスを、と言うのは無謀です。
そこで力を入れているのは、『介護予防』です。
介護サービスが必要となる時期を少しでも遅らせると言う意味もありますが、私としては「誰もが自分らしく生きていく」時期を延ばす、という方が印象はいいと思います。自分の足で好きな喫茶店に行く、買い物をする。映画に行く、旅行に行く。若い時と同じように、自分が好きなことを、好きなようにやっていく。とても素敵なことだと思います。
介護予防の取り組みは、地域によって異なります。行政がスポーツクラブに委託をして運動教室を開催する、福祉用具購入の際に補助金を用意するなど、さまざまです。
介護予防について、先ほどの方を再び例に挙げます。
この方場合、自分で買い物や病院に行くことができています。できることを取り上げる、ということは、一人一人の自立した生活を奪うと言う危険性があります。
病院に連れて行って検査をさせよう、部屋を片付けさせよう、足腰が弱ってるから部屋の中に手すりをつけよう、送迎付きのデイサービスに通わせよう。支援者は様々な支援を検討します。
『その方の生活に寄り添い、その方が、その方らしい生活を送れるように』ということが大切になります。
その人がどう生活していきたいか。これからどう生きていきたいか。これが一番大切です。
支援者に大切なのは、サービスではなくアセスメント(客観的な評価)です。
その人の希望を聞いて、ニーズに合ったサービスをマッチングさせていくことが重要です。
「いや、これって結局木切ってないから解決してなくね?」と思うと思います。
地域包括支援センター職員は、木を切るお手伝いはしません。
今回の場合、『木が迷惑』という話から様子伺いに行ったら、それより根本的な問題があったと言うのが分かった、ということです。
木を切るのは、また今度。職員がご本人様の困りごとを解決していき、信頼関係を構築してから、「そういえばこの木さぁ…」と提案していく。こんな感じになるかな、と思います。
次の記事では、高齢者見守り事業について書いていこうと思います。