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2014年9月の記事一覧
紫光は星空の彼方へ 一章 3話
G県T市。関東平野の北部に位置するこの街は、東京の様に煌びやかで絢爛豪華に発展してはいないが、地方都市としてはまずまずの規模を誇っている。
紫は商業ビルの屋上に立ち、目を細めた。北関東特有の強い風が、紫の髪を波打たせる。
光を纏ったビルの足元には、飲食店や居酒屋が並ぶ雑多な繁華街が広がっていた。普段ならば聞こえて来る下界の喧噪も、今日は強い風の音に紛れてしまい聞こえてこない。
時刻は午後九
紫光は星空の彼方に 一章 2話
満月まで、後七日。
飴色の光が重厚な室内を満たす。
ダークブラウンの絨毯が敷き詰められた室内には、マホガニーのデスクが四つ、一つは南側を向き、他の三つは北側を向いている。部屋の片隅には、本皮の三人掛けのソファーが二つ、ガラステーブルを挟んで向かい合っている。
ソファーには、二人の青年と一人の少女が向かい合って座っていた。青年二人は寄り添うようにして、一冊の分厚い本を読んでいる。
「んもう
紫光は星空の彼方へ 一章 1話
一章 あたしだって一人前なんだから! 春の夜風は、まだ冷たい。
桜の花びらが夜風に舞う。
これが最後の景色だろう。
短い人生だったが、後悔はない。
不思議と、心は満ち足りていた。
だから、俺は満足して逝く事が出来る。
唯一の心残りは、彼女の心がどうなるか。
俺は、彼女の心を連れて逝く事は出来ない。
彼女の心は、こちらに置いていくべきなのだ。
夜の七時を回った遊園地は静かだった
紫光は星空の彼方に プロローグ 3話
改めて近くで見るパナルカルプは巨大だった。身長は紫の三倍以上、優に六メートルはあるだろう。そんな巨大で異形の生物が目の前に居るというのに、紫の心は何一つ乱れていない。それどころか、漸く捕まえた獲物に喜びさえ感じていた。
唸りを上げて尾が紫に迫る。
「カーディナル!」
ポケットから取り出した一枚の布が大きく膨らんだかと思うと、一瞬にして白銀の盾へと変化した。盾を体に密着させ、腰を落とす。龍因子
紫光は星空の彼方に プロローグ 2話
麗らかな春の日差しが降り注ぐ土曜日の昼下がり。平日でも賑わうスクランブル交差点は、土日ともなれば人でごった返す。車のクラクション、人々の喧噪、あらゆる音がない交ぜになり、日常という空間を満たし、創りだしている。
それが、今日は違っていた。
街の中に人気はなく、車もは一台も走っていない。信号が青に変わっても、スクランブル交差点を渡る人の姿は無く、車も停車しているだけで動く気配はない。
この世
紫光は星空の彼方に プロローグ 1話
プロローグ だって仕方ないじゃない!
腹が減っていた。
喉が渇いていた。
喰らい尽くしても満ちる事はない。
何を飲んでも渇きは癒されない。
胸からわき起こる破壊の衝動。
真紅に燃え滾る激しい怒り。
尽き果てる事のない殺意。
沸き上がる漆黒の悪意。
目に映る物、全てを喰らいたかった。
嗅ぎ取る物、全てを破壊したかった。
本能の赴くまま、人を殺したかった。
全てが始まるのは、