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なぜ人は子どもを望むのか?(卒業制作振り返り)

2024年1月に行った武蔵野美術大学クリエイティブリーダーシップコースの卒業制作について、記録します。


作者について

こんにちは、2024年3月に武蔵野美術大学クリエイティブリーダーシップ学科修士課程を卒業した吉良 栞(きら しおり)です。
在学中は、「なぜ人は子どもを望むのか。」をテーマに修士論文の執筆と卒業制作にあたりました。

修士論文について(序文)

修士論文「なぜ人は子どもを望むのか。ープレコンセプション期における子どもを持つことの意味とストーリーー」は、私自身の個人的な動機をきっかけに研究を始めました。幼少期から将来子どもが欲しいと思っていましたが、その理由を改めて考えてみると分からないことに驚きました。そこで研究を進めるうちに、子どもを持つことはいいこと、当たり前(社会規範)のことという前提があり、その意味や価値について十分に考察されていないと感じました。また、子どもをもつことについて考えることは非常に複雑で曖昧なものだと研究を通して学びました。子どもを望む、望まない、の単純な二項で答えることは非常に困難なものです。子どもが欲しくても妊娠しづらかったり、漠然と将来子どもを持ちたいと考えていたり、自分は子どもを欲しくなくてもパートナーは欲しい場合もあります。こうした複雑性に目を向け、互いに耳を傾けることが必要だと考えました。

卒業制作「なぜ人は子どもを望むのか」

卒業制作では、私が研究中に書いていた日記の内容を展示しました。自身の日記を公開することにしたのは、人それぞれのストーリーを知ることが耳を傾け、複雑さを理解するきっかけになると思ったからです。日記は約半年間の内容ですが、その中でも子どもに対する考えが揺れ動き、矛盾していることもこのテーマならではだと実感しています。

私が小学生のころ、プロフィール帳を書き合うのが流行っていた。その中には将来の家族像を書く欄が必ずあり、私は23歳で結婚し、子どもは3人、大型犬と暮らすと書いていた。それから15年が経ち、子どもを望む理由がなんとなくであることに気が付いた。ずっと子どもが欲しいと思っていたのに、理由があまりないことに自分でも驚いた。
それから「なぜ人は子どもを望むのか」を研究し始めた。調査の中で、子どもを持つことの意味が人それぞれ異なることに気が付いた。子どもを持つことが経験として、生活を共にする家族として、責任を持つべき存在として、人生の選択の一つとして、語られた。そこには、子どもを欲しい、欲しくないだけでは表すことはできない、より複雑で曖昧なストーリーがある。
本書は、私が研究と同時に書き記してきた日記をもとにしている。なぜ「私」は子どもを望むのか。私にとって、子どもを持つことの意味は何なのか。

卒業制作「なぜ人は子どもを望むのか。」ステートメント

日記の一部を紹介します。

2023/9/23の日記


2024/1/8の日記


2024/1/10の日記

終わりに

修士研究や卒業制作を通して、「なぜ人は子どもを望むのか。」への一つの答えはなく、むしろその曖昧さ・矛盾・複雑性を認めていくにはどうしたらいいだろうと考えるようになりました。今後の展望として、今回は個人のストーリーに焦点を当てミクロな視点でリプロダクションを紐解きましたが、マクロ視点でのアプローチも必要不可欠だと考えています。なぜなら、社会的な期待や規範は個人の意思決定に影響を与えており、完全に切り離すことはできないからです。また、研究ではリプロダクションに対する社会規範への問題提起と理解拡大に努めましたが、これらの理解と受入を推し進めるための方法を模索していきたいです。

最後に、記事に興味を持っていただき、ありがとうございました。感想やコメント、研究のアドバイス、コラボレーションの機会があればぜひご連絡ください!

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