沙川 侑未 (さがわゆうみ)

なぜ、人は罪を犯すのだろう。その罪は何を壊し、何を奪うのだろう。 アメブロを5年ぶりに再開しました! お気軽にお立ち寄りください(o^^o)✨✨✨ https://ameblo.jp/increasing/entry-12861867065.html

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  • 黒い花の屍櫃 長編ミステリー

    週刊誌『FINDER』に『R・J』と名乗る者から手紙が届く。オカルト同好会『sorbet』を糾弾していた。駆け出し事件記者・桐生は『sorbet』の取材を通し、ある青年に出会う。その青年は悪魔に取り憑かれているといた。  そしてまた、『R・J』から編集部に手紙が届く……。

  • 創作大賞2024応募作品『聖なる夜に花は揺蕩う』

    ミステリーが好きです✨✨✨なぜ人は罪を犯すのか。それを知りたいと思って小説を書いています。

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聖なる夜に花は揺蕩う 第1話 湖の底/「全10話」

  【あらすじ】  12月10日(金)、週刊誌『FINDERー』の事件記者・桐生、北村とカメラマンの岡島は秩父湖に来ていた。彼らは切断された遺体を発見する。きっかけは、今朝『FINDER』編集部に送られてきた手紙だった。いままでに5人殺害し、そのうちの1人を湖に沈めたという内容で、詳細な地図と免許証も同封されていた。手紙には、犯人の署名として円と十字の印が記されていた。円と十字の印を手掛かりに、桐生たちは残る4件の事件へと導かれていく。       12月10日金曜日

    • 黒い花の屍櫃(かろうど)・24 最終話

                 『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      8    五日後の火曜日午前六時。桐生は編集部のスチールデスクの上に突っ伏していた。はじめてカキを任され、入稿を終えたところだった。  先週の企画会議で予定されていた『悪魔憑きの少年の素顔』の記事は、『驚愕! R・Jの素顔』に変更された。桐生と真衣の遣り取り全文を書き起こし、会話のなかで桐生は真衣がR・Jであることを突き止める。  事件は終わった。何度も自分にそう言い聞かせてきた。だが、真衣の行方は依然と

      • 黒い花の屍櫃(かろうど)・23 長編ミステリ

             『黒い花の屍櫃・1』はこちらから         7    一階に明かりはなく、ヨガ教室がある二階と三階、早見の店がある四階の窓から光が漏れていた。 「まだ榊君はアトリエに来てないみたいね。先に早見さんに会いに行きましょうよ。三人のアリバイをちゃんと確かめる必要があるわ」  璃子は軽快に階段を上っていく。桐生の足はいつもより重かった。二日間の大籠出張で疲れが溜まっている。踊り場まで来ると、息が切れた。璃子は桐生を置いてどんどん上っていき、引き離された。  この

        • 黒い花の屍櫃(かろうど)・22 長編ミステリ

               『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      6    翌木曜日に出社すると、赤石に呼ばれた。北村が桐生の横に並ぶ。 「で、久利生稔の死因はわかったのか」  赤石の鋭い眼光が二人に向けられた。  きのう、舛添トワから話を聞いたあと、桐生と北村は千厩警察署へ立ち寄っていた。久利生が数日間トワの家に滞在していたことを話し、黒ヒヨスの毒を摂取していた可能性があることを伝えた。 「死因は頸動脈切断による失血です」 「久利生が自分で毒を飲み、自殺した可能性については

        • 固定された記事

        聖なる夜に花は揺蕩う 第1話 湖の底/「全10話」

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        • 黒い花の屍櫃 長編ミステリー
          24本
        • 創作大賞2024応募作品『聖なる夜に花は揺蕩う』
          10本

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          黒い花の屍櫃(かろうど)・21 長編ミステリ

               『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      5    駅前で舛添と別れ、二人は車で大籠へ向かった。母親の自宅は、遺体が見つかった廃屋とは逆方向にある林の向こうだという。途中、土産物屋でわらび餅を買い、その隣にあった牛丼屋で汁だく特盛りを平らげた。北村は牛皿と豚汁を追加し、その食欲に圧倒された。睡眠の不足を食欲で補っているかのようだ。 「舛添さんに植物のことを訊かなかったのは、そのほうが住所を聞き出せると思ったからですか」  桐生はきょう二杯目のコンビニ・コーヒ

          黒い花の屍櫃(かろうど)・21 長編ミステリ

          黒い花の屍櫃・20 長編ミステリー

               『黒い花の屍櫃・1』はこちらから       4  警察へ通報後、千厩警察署での調書作りに五時間半を要した。R・Jから送られた手紙を提出したが、警察は自殺と他殺の両面から捜査するという。久利生の遺体は警察署の霊安室に運ばれていた。検視官が検案した後、司法解剖に回されることになる。  調書作成の間中、桐生は頭のなかで同じ問いを繰り返していた。  ――久利生は自ら命を断ち、その身を神に捧げたのか。本当に彼がR・Jだったのか。それならなぜ、『FINDER』に手紙を

          黒い花の屍櫃・20 長編ミステリー

          黒い花の屍櫃(かろうど)・19

            『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      3    翌火曜日に出社すると、徹夜で入稿を終えたばかりの北村と赤石がいた。通常なら疲れ切ってこれから仮眠室に寝に行くはずだが、二人の目は強い光を発している。桐生を見ると、手招きした。二人ともラテックスの白い手袋をしている。久利生謙三から聞き出した話の報告を待っているのではなさそうだ。 「また来たよ。R・Jからだ」  赤石はスチール・デスクの上に載っている箱から新しい手袋を取り出して桐生に渡した。これまでに来た手紙では手袋

          黒い花の屍櫃(かろうど)・19

          黒い花の屍櫃(かろうど)・18

              『黒い花の屍櫃・1』はこちらから        2    翌月曜日。赤石はスチールデスクの前に座り、ボールペンを顎に押し当てている。昨夜梶木から聞いたことを赤石に報告したところだった。 「正木希美が正木耕助を殺したんだろ。近くの樹林にでも埋めたんだよ。娘はそれを知って悪魔に取り憑かれたんだ」 「有紗ちゃんが悪魔の力を借りて父親を殺した可能性もあります」  桐生はデスクの前に立ち、手帳に視線を落とした。大籠で会った神父が語ったことを思い返す。父親を殺したのは悪魔

          黒い花の屍櫃(かろうど)・18

          黒い花の屍櫃(かろうど)・17

             『黒い花の屍櫃・1』はこちらから  第四章 一粒の砂        1    少女は悪魔を呼び、父親を殺した。もしそんなことが可能だったとして、遺体はどこにあるのか。悪魔が正木耕助を殺したのなら、遺体は残されていたのではないか。有紗が遺体を隠した。あるいは遺体を見つけた希美が処理したのか。  ――一番いいのは、遺体が見つからないことです。  以前、北村のアシとして東京拘置所に同行したときに、取材対象の男が話した言葉が浮かぶ。男は十歳のときガレージで父親を殺し、遺体

          黒い花の屍櫃(かろうど)・17

          黒い花の屍櫃(かろうど)・16

             『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      5    フロントガラスにぽつぽつと雨が当たった。小さな水滴は白い尾を引きながら流れていく。ワイパーが間隔を空けながら左右に揺れ、水滴を拭っていく。  男が地図に記した刑場跡は、枯れ草に覆われた空き地にあった。木製のフェンスで囲ってある。ごつごつした縦長の岩がいくつも並んでおり、何も知らなければストーンヘンジを模しているかのようにも見える。信仰を捨てるより死を選んだ人々が眠る場所は、ひどく寒々として寂しかった。  璃子は

          黒い花の屍櫃(かろうど)・16

          黒い花の屍櫃(かろうど)・15

               『黒い花の屍櫃・1』はこちらから       4    翌土曜日。正木希美の義姉である舛添翔子から『FINDER』に連絡が入り、桐生と璃子は翔子が住む気仙沼へ向かった。東京駅から新函館行はやぶさ十九号に乗り、一ノ関に着いたのは正午過ぎだった。  気仙沼まで大船渡線に乗り換えるものだと思っていたが、璃子は構内を突っ切って、足速に駅から出ていく。スマートフォンを取り出し、ロータリーを横目に通りを渡る。 「理子さん、乗換口はそっちじゃないけど」  新幹線のなかでう

          黒い花の屍櫃(かろうど)・15

          黒い花の屍櫃(かろうど)・14

             『黒い花の屍櫃・1』はこちらから         3  青梅署へ向かう途中、梶木が書いた『精神の扉』の続きを読んだ。南東アラスカで出会ったシャーマンのことが詳述されていた。瀕死の怪我を負った少年を治したり、余命一年と宣告された不治の病を霧消させたエピソードにはリアリティーがある。治療が事実なら、精霊はいまもこの世界に生きていることになる。  久利生は梶木が行った儀式で悪霊に憑かれた。意図しない霊を呼び寄せてしまったと、梶木は話していた。梶木と会話を重ねることで、自

          黒い花の屍櫃(かろうど)・14

          黒い花の屍櫃(かろうど)・13 長編ミステリ

             『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      2    正木希美は『sorbet』の会員だった。有紗が亡くなったあと、精神的な支えを求めているときに梶木の著作と出合ったようだ。  府中駅から京王線で新宿へ向かう途中、スマートフォンで検索すると、梶木の著作は三冊見つかった。新宿駅で書店へ立ち寄り、『思想・宗教』の棚から一冊抜き出した。『精神の扉』と題されたハードカバーの表紙には、木彫りの面の写真が使われている。鷹を模した木彫りは、シャーマンが儀式で被(かぶ)る面を思わせ

          黒い花の屍櫃(かろうど)・13 長編ミステリ

          黒い花の屍櫃(かろうど)・12

             『黒い花の屍櫃・1』はこちらから    第三章 瀆聖        1    黒い石に囲われた枯れ葉の下に、白い骨は埋まっていた。全部ではない。頭部や骨盤はなかった。それでも人骨だとわかったのは、両掌(てのひら)の骨だった。五センチほどの間隔を空け、土を掴むように置かれていた。アクリル樹脂の花は骨と枯れ葉が風で飛ばされないための重石のようだった。  桐生は新幹線のシートにもたれたまま、以前、東京都監察医務院院長の山辺武彦に取材したときに聞いた話を思い返した。  通常

          黒い花の屍櫃(かろうど)・12

          黒い花の屍櫃(かろうど)・11

            『黒い花の屍櫃・1』はこちらから        6  翌木曜日は朝から雨が降っていた。桐生は盛岡行きの新幹線やまびこに乗っていた。三人掛けのシートで、通路側に武藤、窓側には久利生が座っている。  久利生は生前の正木有紗に会っていた。正木耕助はまだ事故に遭う前で、木彫り店は繁盛していた。日曜日や連休には、観光客向けの体験工房を開いていたという。  正木親子との接触が、今回久利生が悪魔に取り憑かれたことと関係しているのだろうか。それを調べるために大籠にある集落に行こうと

          黒い花の屍櫃(かろうど)・11

          黒い花の屍櫃(かろうど)・10 長編ミステリ

               『黒い花の屍櫃・1』はこちらから      5    山手線で恵比寿から高田馬場へ移動する間、スマートフォンで木彫り店を検索した。岩手県内にいくつかある。だが、正木の名前は見つからなかった。以前調べた事件の統計によれば、年間約七万人が失踪しているという。事件の確証がなければ警察は捜査しないのが現状だ。  西武新宿線に乗り換え、小平へ向かう電車のなかで桐生は手帳を開いた。川瀬から聞いた正木耕助の住所の下に、『失踪十年・自分の意思か?』と書き付けてある。  事故後、

          黒い花の屍櫃(かろうど)・10 長編ミステリ