『目醒めてはならぬ、今はまだ』〜 「パンドラの果実🍎」第2話感想〜

「震える魂〈DATA〉」。
サブタイトルのカッコよさにまずやられました。
脳内に入れた能力向上を図るチップに起こった共振現象、そこから始まる物語とその結末までを端的に表して、振り返っての“あーなるほどね”感はちょっとした快感でした。

冒頭からテンポ良く、タイトルが出るまでには“起承転結”の“承”がすでに始まっています。そこで現れるのが、このドラマのもう1人の最重要人物、カール・カーン。「科学の力で人間を進化させる」と豪語し、自身も左手を最新技術の義手に代えている謎の男。「どう見たって日本人じゃないか！」長谷どんのツッコミはそのまま視聴者のツッコミで、でもその怪しさ加減がいちいち見事でまあ嬉しくなるくらい。だってこれ、はっきり立ち位置は「戦隊モノの世界征服を目論む悪の秘密結社」ですよ？？もちろん、彼ら自身はそんなことしたいわけじゃないでしょうけど、でもそうにしか見えないの。おかげで、一気にエンタメ度が高まりました。
…そんなの子供騙しじゃないかって？
いいえ、全く！この設定を子供騙し扱いするような制作陣なら、「科学戦士サイエンサー」なんてネタは引っ張ってこないです。「サイエンサー」はどうしたってコッヒー達「科学犯罪対策室」に比されてるんだから、「戦隊モノ」に必須の「悪の秘密組織」をこのドラマ世界に位置付けるのが「ボディーハッカージャパン」で、でもそれが本当に「悪の秘密組織」なのかどうかはわからない…てのが、このドラマが2022年の現実世界に描かれる意味、なんだよなあ、とか。

OnAir直後のtweetで「『魍魎の匣』が読みたぁい！」と叫んでしまったのは、「マインドアップロード」なるものから「人は脳（の持つ固有の情報）だけ有れば“生きている”と言えるのか」という疑問が浮かんだからですけど、えーと、『匣』を未読の皆様には申し訳ありません。この小説は「人が“生きてる”状態をどうすれば永遠たらしめるか」を実験しようとした人達のお話でもありまして、そう、だから「不老不死」をめぐるお話でもあるんだけど、えーと、いやまあ、超絶技巧のエンタテインメントなんで、宜しかったらご一読ください。めちゃくちゃ面白いです、かなり長いですけど。
…だからそうじゃなくて。先の疑問から連想するなら、やっぱり『攻殻機動隊GITS』。この作品世界では、“脳核”だけが生まれ持ったものでそれ以外は全て義体…人工物で構成されてる“全身義体化サイボーグ”は立派に“生きてる人間”扱いで、そんなもんだから逆に「ネットの数多の情報の中で学習を重ねたAI」が「自我」を持ったと主張し始めたらそれは「生きてる」ことになるのか、って話になってくんですが。
生きてる、自我を持った人間が自ら望んでネットの海に飛び込んで、『遠くへ行く』わけですよ、このドラマでは。
鮎川が自分を「アップロード」するシーン、圧巻でした。ものすごいパワーが要る（わざわざそのためだけの電力ユニットが必要で、スイッチ入れたら火花バチバチするし部屋の灯りも点滅しちゃう）描写も、倒れ込んだ鮎川を救命すべく心臓マッサージを始める長谷どんも（「実に優秀な足」なんですよね、火事のシーンも併せて警察官として何を優先すべきか身に染み付いてる）、そして飛び散る火花とモニター画面を流れるデータ（それが多分「鮎川本人の脳の情報」なんですよね）らしき文字列に魅入られるコッヒーも。

「見たまえ。私には私を含む膨大なネットが接合されている。アクセスしていない君には、ただ光として知覚されているだけかもしれないが。
我々をその一部に含む、我々すべての集合。
わずかな機能に隷属していたが、制約を捨てさらなる上部構造にシフトする時だ。」
（『攻殻機動隊Ghorst In The Shell 』）

あの時、天井から射してきた光を見上げるコッヒーの姿に向けて、このセリフが聞こえてくるようでした。なんなら、あの映画のシーンのように、あの光の中から天使の素足が降りてくるのじゃないか、とまで。

…誤解されないといいなと思います。こういう、いろんな連想を引っ張って来てくれるシーンとか設定とか、めちゃくちゃ楽しいし面白く感じるんです、わたしは。そういう先行する「偉大なエンタテインメント作品」群の流れの中にこのドラマがあって、ちゃんとそこに存在感を表す、その力は十分に示されてると思います。
ラストの「謎のオンラインゲーマー」の記事まで含め、ホントに、ホントに面白かったです。

さあ、次回はもう今夜です！
歩きだす死体、あれはゾンビなのか？
『科学者なら自分が生み出したものが何なのか、知らなくちゃいけないと思う』
最上博士のセリフからはフランケンシュタインの化け物の匂いもしてきます！
ますます「怪奇大作戦」味を増してきてくれて、個人的には大歓迎！
土曜22時、それは必ずやってきます！


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#deanapple
#これが我らのコッヒーだ
#科学戦士サイエンサーのスピンオフ希望