柳橋歌舞伎保存会による「菅原伝授手習鑑 寺子屋の場」〜中田町の柳橋歌舞伎2023③(福島県郡山市)
2023年9月17日、郡山市中田町の柳橋歌舞伎伝承館(黒石荘)で開催された柳橋歌舞伎の定期公演を観劇してきました。
①で紹介した中田町公民館受講生による「白浪五人男」、②で紹介した「義経千本桜」に引き続き、柳橋歌舞伎保存会による「菅原伝授手習鑑 寺子屋の場」を写真中心にご紹介します。
①と②の記事はコチラ↓
柳橋歌舞伎は、一時期途絶えたことがあるとはいえ、長く伝承されてきただけあって、演技がすばらしいです。役者さんも長くやっているので、見せどころを知っていて、セリフまわしや所作もこなれた感じ。
あと以前も書きましたが、義太夫さんがすばらしいです! すごくストーリーが頭に入ってくる語り(でいいのか?)でした。この方も中田町の方なのでしょうか。
写真の前に、「菅原伝授手習鑑」のあらすじをご紹介。そのほうがわかりやすいかと思います。
時は平安時代、天神さまとして敬愛される菅原道真と政敵の藤原時平の時代です(衣装は江戸時代だけど(;^_^)おそらく菅原道真が太宰府に流された頃か、亡くなった頃かと思われます。
歌舞伎に限りませんが、言葉や所作が現代とは違う伝統芸能は、あらすじと見どころを先に知っておいたほうが、楽しく観劇できるかもしれません。
それでは、ここから写真でご紹介♪
まずは源蔵さんちの寺子屋です。手習する子どもたち。この写真だと格子の影で見づらいと思いますが、後ろのほうに写ってる白塗りの子が菅秀才です。
少し年嵩のこの子は「よだれぐり」。実はえーとこのぼんぼんだったり。手習なのに、「へもへのもへじ」を描いて得意げなこの表情。
そこへ源蔵の妻、戸浪さんが登場。「これ、何をやっている!」とよだれぐりを叱ります。立たされるよだれぐり。
そこへ、上品な奥様が利発そうな男の子を連れてやってきます。後ろの下男三助役の方は、「白浪五人男」で弁天小僧菊之助を演じた方ではないですか!
小太郎を預けて、「よよよ…」と泣きながら、去っていく上品な奥様。
奥様が持ってきた饅頭(薄皮饅頭と見た!違ってたりして…)を観客に向けてまくよだれぐり。もちろん、事前に自分も食べて、寝ている下男の三助の口にもつっこんでいます(むせる三助(;^_^)
起きた下男三助とよだれぐりのかけあい。源蔵の妻・戸浪と上品な奥様・千代の「扇の話」のくだりを受けたコミカルなシーン。全体的にシリアスな「身代わりモノ」なのですが、こうしたシーンもあって、ちょっと楽しく見られました。
藤原時平の家来に「匿っている菅秀才の首を差し出せ」と迫られ、苦悩の表情を浮かべ、腕組みをした源蔵が登場。
妻の戸浪と相談し、今日入門したばかりの小太郎の首を討ち、「菅秀才の首」として差し出すことに(おそろしい相談や)
中央の黒字に金糸の模様の着物姿が主人公の松王丸。
源蔵の家にやってきて、時平の家来の春藤玄蕃とともに菅秀才の首を確認します。
このシーンの前に、預かっている子ども一人ひとりの顔を確認する、ちょっとコミカルなシーンが入り、やっぱりよだれぐり大活躍!
桶の中に入っているのは、身代わりとなった小太郎の首。冷静に我が子の首を確認する松王丸。
時平の家来に気づかれないよう、苦悶の表情を隠す松王丸。
松王丸の演技に息を飲んで見入りました。
松王丸が去り、春藤玄蕃が去り、誰もいなくなった舞台に崩れ落ちる源蔵。
そこに預けた我が子を迎えに来た上品な女性(松王丸の妻・千代)がやってきて、さらに松王丸もやってきます。「知られたからには…!」と松王丸に刀を向ける源蔵。
菅秀才の身代わりとなった小太郎が、自分たちの実子であることをあかす松王丸と千代。涙ながらに思いを語ります。
このあと、松王丸と千代夫妻は白装束で、小太郎を野辺に送るのですが、その前に帰る時間となってしまいました………残念です。最後まで見たかったな。
そうそう、もう一つの見どころが、「日没後の舞台」です。すっかり日が沈み、闇が世界を覆う前の澄んだ青い空を背景に浮かびあがる舞台。こちらも美しい光景でした。
ということで、福島県郡山市中田町の柳橋歌舞伎の「令和5年度定期公演」レポートは終了。来年はどんな演目が披露されるのでしょうか? こちらも楽しみです。
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