【見開き1P】赤い海と青い海
※見開き1ページ相当の小説です
魚は赤い色をしています。
魚には様々な種類がいますが、あらゆる魚が同様に〈不思議なもの〉を作ることができます。その〈不思議なもの〉の色や形は様々で、それが種類を決めるのです。
その〈不思議なもの〉を食べに鳥がやって来ます。鳥はお礼に小さな生き物を落として、魚はそれを食べて生きてます。
魚は山で生まれ、川を下って海にやって来ます。川を下る間に魚は多くのことを学び、自分が作れる〈不思議なもの〉を知ります。そして、どこに行けば同じものを作っている魚の群れに行けるのかを知ります。ほとんどの魚はそこへ向かいます。
とある魚も同様にそこに向かいました。
たくさんの魚がいて、そしてみんな同じような〈不思議なもの〉を作ります。
そこでしばらく過ごしていたその魚は、ふと、自分の作った〈不思議なもの〉をなかなか鳥に食べてもらえないことに気づきました。食べてもらえないとお礼をもらえません。このままでは餓死してしまいます。
周りを見渡してみると、その魚と同様に、なかなか食べてもらえない魚が多くいることに気づきました。同時に、たくさん食べてもらえる魚もいました。どうしてそんな差があるんだろうと気になって、近くにいた魚に尋ねてみました。
「どうしてあの魚はたくさん食べてもらえるのでしょう」
「あいつは長老なんだ。一番早くにここに来たから、鳥たちも彼のところに集まっている。早く来た方がたくさん食べてもらえるんだ。ほら、あそこのやつらは次あたりに来たんだが、長老よりは少なくてもたくさん食べてもらえてる」
「どうやったら僕たちのも食べてもらえるでしょうか」
「さあな。とりあえず作るしかないのさ。少しは食べてもらえるからな」
ある日、一羽の渡り鳥が岩場におりまして、その魚は同様のことを尋ねてみることにしました。
「私は上から見ていたけれど、ここは大変そうだね。もっと数の少ないところに移った方がいいよ。作ってると知れば渡り鳥が集まって、そして噂するから、他の鳥も集まってくる」
「しかしここも、この周りも、たくさんの魚の群れがいます。それに、もし少ないところで作ったとして、同じものしか作れないのに、わざわざそこ
まで来てもらえるでしょうか」
「同じものじゃダメだろうね。少しは違うものを作るように工夫しないと。でも、それはふと閃いたりするかもしれないよ。だから、まずはここから出て、色々な海を巡ってみるといい」
その魚は群れを出ることにしました。
たくさんの海を巡り、そして、一つ工夫する方法を発見しました。
そしてついに、まだ誰もいない海へと来たのです。
そこは透き通るように青い海でした。
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