【見開き1P】魔剣士ジャッコは一夜を駆ける
黒いマントを着たかぼちゃ頭が日本刀を振り下ろす。白い浮遊体は見事に両断され、
「ぎぃやああっ」
断末魔を上げると、蒸発するように宙へと消えていった。
かぼちゃ頭は刀を鞘に納めると、休む間もなく走り出す。刳り貫かれた内部に灯る炎が揺らめき、両目がきらりと光る。
日本はまさにハロウィンの真っ只中。さりとてジャックオランタンを置いているのは何軒だろうか(日本に限った話ではない。多くの家はただただハロウィンを楽しんでいるのだ)。
今夜は年に一度、霊が家々を尋ね、同時に悪霊が溢れる夜。
魔除けが無ければ何があるか分からない。
そこで生まれたのが退魔のカボチャたち。こと日本においては剣士の姿。
彼らは自身をジャッコと名乗る。
日本中を、剣士のカボチャが駆け回る。
「なんだぁ、テメェ」
二階建ての家を軽々と超える巨体の悪魔がジャッコの前に現れた。その手は屋根をすり抜け、首まで隠れている。
ジャッコは近くの家屋に飛び乗ると、軽快に屋根を走り、一瞬にしてその手首の下を通り過ぎた。直後、手首から下がずるりと離れて落下する。
目にも留まらぬ居合切り。
悪魔は手を失った腕を上げる。
「うがああああああああああああっっっ!!!」
悲鳴を上げるその隙を逃さず、ジャッコはそいつに飛び掛かる。またもや一瞬の抜刀。そいつの首を見事に切り落とした。
消滅していくそいつを背にジャッコは家の中を一瞥する。
「どうしたのお父さん?」
「あ、いや、なんか変な感覚と言うか、何かに掴まれたような感じがしたんだけど」
「気のせいじゃない?」
「そうだよな」
ジャッコは刀を納めて再び走る。
繁華街の喧噪の中。内臓を集めて押し固めたような化け物がまるで酔っぱらったように歩いていた。そこに他のジャッコが数名。
「加勢する」
彼は刀を構えて化け物へ向かう。
夜明けとともに炎が消えるそのときまで、彼らは戦い続ける。
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