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「神」と呼ばれたおばさん

この世の中にはダメなおばさんと、そうでもないおばさんがいる。


今日は身近に存在するダメなおばさんを紹介しよう。


今僕は旅生活中で、短期の住み込み仕事をさせていただいている、今回はとある山の上のスキー場のホテルだ。去年初めて働かせていただいて、今年もお誘いいただいた。
そこにいるおばさんの話。


去年働いたときに若者から絶大な人気を誇っていたおばさん。人気が無い方だけど…。

人気のあるおばさんって語呂もちょっと怪しさが過ぎるので、おばさんはそもそも若者から人気があるかどうかの論点は置いておきたい。



前回にも書いたように、建物的には廃業寸前崩壊寸前のゾンビホテルにて共に働いている、言いたかないが言わば職場の"仲間"だ。


去年一緒に働いていると、よく指示が飛んでくるし、お願い事もたくさん来るので、僕を頼りにしてくれているんだろうかと思って嬉しかったが、やはり何ヶ月か一緒に働いているとわかってくる。

どうやらそうでもないらしい…。




何が"そうでもないか"って、言うと。

冒頭でも述べたように若者に人気が無いというところからヒントを得てよくよく観察してみたのだ。
(若者って人の事よく見てんのな。それに比べて僕は鈍感でダメだな)


それまではよく働くし、気も利くし、ちょっとした失敗にもすぐに気付いて注意してくれる人だなと思っていた。何事も知らぬが花とはよく言ったものだ。


しかし、若者からこんな称号のような名前で呼ばれていたので全てを疑うしかなかった。



その名も。

「"やってるふりの神"…」



である。
神……なの?



すごい。すごすぎる…。

あだ名にゴッドが付くのだゴジラみたいでホントにすごい。

ん?ゴジラは本名か…?

まーいーか、とにかくすごい。





仕事にはたいてい決まった"やるべきこと"があるが、優先度によってそれをどう組み立てていくかは、"普通に"考えられる人にとっては説明されるとムカつくくらいの当たり前な事なのでその説明はしないが、ご存知の通り、たまーにそれがわからない人がいるものだ。
簡単に言えばそれである。


重要度、優先度、緊急度がそれぞれ絡み合ってちょっとだけ難しさを出すことが仕事にはある。特に言えば飲食なんか経験があるとわかりやすいだろう。


料理を同時に出すとか、温めるのに時間がかかるだとか、明日の準備や無くなりそうな食材の仕込みだとか。いろいろ考える事や同時進行しなきゃいけないものとか、ホントにいろいろある。


急ぐものはお客様の注文、無くなりそうな材料の準備は緊急度高めで優先、明日の予約のお客様に出すものの仕込みを忘れないようにと重要度が上がる。

重要だけど、時間のかかるソースの仕込みとか、一晩寝かせる煮込みとか、今やりだすとコンロの場所が邪魔になっちゃうとか、とか…いろいろと考える事があるわけだ。


掃除とか片付けにも同じような事はある。

先に洗うべきものや薬剤をかけておくと汚れが落ちやすくなるものとか…。

そういう事を考えながらやると、お掃除もおもしろくなってくるが、そういう段取りをわからないままでいると単なる作業がめんどくさいだけの怠惰な人になりかねないので注意。





話をぐーんと戻して。


では、"やってるふりの神"がこういう仕事をどうやるのかと言うと、優先度はごちゃごちゃで、気になったこと目についた事をとにかく人に伝えてくる。
そう、自分で発見した仕事を自分で消化しようとしないのがミソ。「あ、これやってあれやって」と発見次第全部言うわけである。

初心者アルバイトや、若者は「すみません!」とペコペコ、怒られたと感じてしまうし、『あの人にこう言われたんだけどこの人はこうなのか…』と、果たしてどっちが正しいのかよくわからんことになってしまう。そしてさっきまでやっていた事を途中で投げ出すもんだから、他の人に叱られる。

「コレ出来てないよ!」
「中途半端で逃げんなよ!」
「せめて誰かに任せろ」

と、こんな調子である。

人というのは多数決に弱く、アルバイト君は他のアルバイト君に質問して、どうやらみんな「神」の言うことには従っているらしい…。となり、「神」は正しいと、"新しい宗教"かのようなおぞましい環境が生まれてしまうのだ。


しかし、慣れてくると次第にその「神」とやらは特に正しくないとわかりだす。反逆者が出る。


そう、絶対的な神は単なる「やっているふり」がほとんどで内容が伴っていないデタラメを吐き散らすことがわかるのである。


具体的な事を言おうか。

急いで皿洗いをしなきゃいけないときに「神」は何をしているかと言えば、こないだ僕が見かけた時は、自分の文房具の整理整頓をしていて、それが終わればいつでもできる場所の掃除を入念にしていた。

コレである。


ぶっ飛ばしてやりたかったな。



「やってるふりの神」は筋金入りだった。

なので、僕は自分の仕事は最後までやる事。
見つけた仕事は自分でやり抜く事。

神にやってと言われた時。コレがいちばん重要な事だ。
自分でできない事を人に押し付けないでください。人が何をして働いているか見てください。急がなければいけないなら、自分でやるのがいちばん早いんです。お客様の迷惑になるような事なら尚更です。

と、突っぱねる。
すると神は神々しくも口を閉ざす。
自分がやれと言われるのがいちばん効くようである。だってさ、やってるふりしかしてないんだもの。









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二ノ宮金三郎
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