見出し画像

映画館で、やや困っているおじさんに声をかけた

「ひと」という生き物は不安になると右や左をたくさん見て安心を求める。自分が正しいかどうかと確認したいときに他人と比べて「こ、コレで良いんだよな…」と周りをキョロキョロ見ているんだな。

あとはしきりに店員さんを探しているって事もある。

「これ買いたいんだけど…ちょっと、誰か聞いて〜」
なんて思いながらキョロキョロしているのである。
「あのう…えっと…店員さんですか?……違う?ああ、ごめんなさい。」
と、間違える事だってある。そうなると不安はさらに大きくなってしまう。

あとは、道がわからないときとか。
「えーと…ここにローソンがあって、こっちに行きたくて…で、あそこの角を、右?いや、左か…?」
最近はケータイで地図が見られるから、道の真ん中に突っ立って画面と睨めっこしながらキョロキョロ。僕もよくやる。兎にも角にも“困ったなぁ”と思ったら、とりあえずキョロキョロしておくのだ。


テストのときはキョロキョロしちゃダメ。わからない問題があって不安になったら、「あとでやろう。あとで。」とサッサと見切りを付けて次の問題へと行った方がいい。僕の場合、そうやってテストの問題を後回しにして行って、1周回って上の問題①まで帰ってきたことがある。

つまり…。“何にもわからなかった”ということだ。そういうこともある。
そういう時は潔く寝てしまうのも手だが、テストの文を繰り返し読んで、ポイントだと思う単語に下線を引き、「一応考えることはした」という証拠を残したりして、努力して問題に立ち向かったというアピールをするのもいい。

意外にもそれで問題解決する場合だってある。下線を引いているうちに英文なんかが読めてきたりする気持ちになることがある。「なんだか習ったような」という記憶の断片が脳内に見つかる事だってあるのだ。(僕の場合、間違ってたけど…)

苦し紛れにもがいたり、キョロキョロするのにも、すっぱり諦めてしまうよりは良いということだ。
「諦めたらそこで試合終了だよ。」
と、有名な言葉がふと浮かぶ。

ところで僕は、キョロキョロして不安そうなひとがいるとけっこう高い確率で声をかける。
最近は“無人化”の影響が広がっていて、スーパーのレジから駅のキップ、ラーメン屋さんや定食屋さんに、映画館とか博物館までが券売機で、ガチャガチャと自動に買うのが一般的になってきている。
スマホなども利用者が増えて、画面にタッチして選択、決定するのも抵抗を感じないひとが膨大に増えた。

その一方で、未だに使い方がわからないひとも、そりゃあいくらかおられて、そんな時にキョロキョロと見回しては、みんなの様子を見たり、店員さんを探しているのである。
ちょうど映画を観る機会があったので、いくらかある券売機に面して操作していると、隣のおじさんがキョロキョロしていた。小声でぶつぶつ。
「えっと…コレ、かな?…コレだね。コレ?コレだよね?」
と、不安丸出しの言葉が聞こえてくる。

こういう時や、こういうひとには慣れている。駅のキップや道端でキョロキョロしてモタモタしているひとになぜかよく出くわす。だいたいは、お釣りが出てこないんだとか、Suicaにお金がどれたけ入っているか確認したいんだとか、どのスイッチを押せばいいんだろうとか、そういう“ちょっとしたこと”に不安になって多少のパニックになっているのだ。(ラーメンとか定食の時はどれにしようか悩んでいる。僕もよく悩んで後ろのひとに“どうぞお先に”って譲るのだけど「僕もまだ決まってないんですよ。笑」と言われたことがある)

おじさん、大丈夫かい?

隣の券売機から声をかけた。
「えっと、シニア料金ってコレかな?」
と“1100円”と書かれたところを指さす。
(普通は1800円だから)安いからね。そうだと思うよ。
そう言うと安心したのかお金を支払っていた。

誰かが助けてくれるってのは良いことだ。券売機だけじゃない。いろんなことにキョロキョロしてみる。
仕事場の事、学校の事、お金や恋人の事や友達から家族のことから愛犬の事に至るまでキョロキョロしてみる。
そうすると、それに気づいた誰かが気にかけてくれるものだ。僕のような人間であってもそうするように。

世の中捨てたもんじゃないねと言うけれど、みんなそれぞれちゃんといいひとなんだよね。

もし、生活していて、生き苦しさを感じているならキョロキョロした方がいい。生活をすることはテストじゃないんだから。
何かと解決策を知っているひとが、すぐ側にいたりするものだ。助け合って、助け返して、みんながんばっているんだよね。

引き続きキョロキョロなひとに声をかけよう、これからの僕は。

いいなと思ったら応援しよう!

二ノ宮金三郎
気軽に読んでいただきたいので、ひとつひとつの記事に値段は付ていません。靴磨きや仕事のお手伝いなどを投げ銭でやってみると、様々な方が僕の仕事にいろいろな価値をつけて下さってすごく助かります。僕の記事にもあなたの価値をつけていただけると嬉しいです。