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【直前整理】パワーハラスメント防止措置が中小企業にも義務化

企業にパワーハラスメントの防止を義務付ける法律
「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」が、大企業では、既に2020年6月1日からスタートしています。

そして、従業員数300人以下の中小企業においても、2022年4月1日からスタートすることになります。

そこで、今回は、
●パワーハラスメントの発生状況
●パワーハラスメントの代償
●パワーハラスメントの防止措置
●パワーハラスメントの定義(3要素、6類型)

について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。

■パワーハラスメントの発生状況

平成28年度 厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の従業員調査よると、

「過去3年間にパワハラを受けたことはありますか?」

この質問に対し、回答者10,000人の32.5%にあたる3,250人の方が「ある」と回答しています。

また、「ある」と回答した方に「そのパワハラを受けた後どうしましたか?」と質問すると、
「何もしなかった」と回答した方は40.9%「会社を退職した」と回答した方は12.9%にも上りました。

つまり、職場にはパワーハラスメントが多数存在すること、
「何もしなかった」旨の回答から、被害者はなかなか声を上げられないこと、
「会社を退職した」旨の回答から、パワーハラスメントは、労働力を低下させてしまうことがわかります。

■パワーハラスメントの代償

パワーハラスメントの代償は、次のとおりです。

◆社員への影響は?
 ●心身の健康を害し、休職等に至る
 ●職場環境の悪化

◆会社への影響は? 
 ●モラールの低下⇒生産性の低下⇒業績の悪化
 ●人材の流出
 ●訴訟による賠償⇒業績の悪化
 ●企業イメージの悪化⇒採用への影響

◆その他 
 ●コンプライアンス上の問題
  就業規則違反、民法、刑法

もし、あなたが行為者になったら…
◆社内での処分
懲罰規定(就業規則)
「減給」「降格」「けん責」「出勤停止」「諭旨解雇」「懲戒解雇」等

◆民事上の代償
行為者:不法行為責任(民法709条)
会社:
・債務不履行責任(民法415条)(安全配慮義務違反)
・使用者責任(民法715条)

◆刑事上の代償
名誉棄損、侮辱罪、脅迫罪、暴行罪、傷害罪等
  ⇒社会的信用、社会的地位を失う。自身の家庭が崩壊する。

■パワーハラスメントの防止措置

企業には、次の2つの措置を講じることが求められます。

1.ハラスメント防止の周知
 ・企業の方針の明確化と周知
 ・厳正対処方針の周知
 ・相談窓口の設置と周知

2.相談しやすい環境と再発防止
 ・相談窓口での適切な相談
 ・事実確認
 ・被害者への配慮措置
 ・行為者への措置
 ・再発防止措置
 ・プライバシーの保護措置と周知
 ・不利益な取扱いの禁止と周知

上記の措置については、改正公益通報者保護法で求められる措置と共通する部分が多いことから、「内部通報制度」の構築とセットで対応しましょう。

■パワーハラスメントの定義(3要素)

パワーハラスメントの「3要素」は、次のとおりです。

1.優位的な関係を背景とした言動であって、
2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
3.労働者の就業環境が害されるもの

1.から3.の要素を満たすものがパワーハラスメントになります。

「3要素」の具体例は次のとおりです。

1.優越的な関係を背景とした言動

言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの
(例)職務上の地位が上位の者による言動

2.業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、またはその態様が相当でないもの
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

3.労働者の就業環境が害されるもの

当該言動により労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること

この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当であるとされています。

■パワーハラスメントの定義(6類型)

パワーハラスメント6類型(パワーハラスメントに該当すると考えられる例)は、次のとおりです。

1.身体的な攻撃(暴行・傷害)

・叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける。
・丸めたポスターで頭を叩く。

2.精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)

・同僚の目の前で叱責される。
・他の職員を宛先に含めてメールで罵倒される。
・必要以上に長時間にわたり、繰り返し執拗に叱る。

3.人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

・1人だけ別室に席をうつされる。
・強制的に自宅待機を命じられる。
・送別会に出席させない。

4.過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)

・新人で仕事のやり方もわからないのに、他の人の仕事まで押しつけられて、同僚は、皆先に帰ってしまった。
・職員に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。

5.過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

・気にいらない職員に対して嫌がらせのために仕事を与えない。
・運転手なのに営業所の草むしりだけを命じられる。
・事務職なのに倉庫業務だけを命じられる。

6.個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする。
・交際相手について執拗に問われる。
・妻に対する悪口を言われる。

参考・出典:「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ報告書」

上記1.は「他者危害原則」です。
暴行罪や傷害罪といった、他人に危害を与えてはいけない法律で禁止される行為になります。

それに対し、上記2.から6.は「不快原則」です。
法律で禁止するほどではないが、マナーとして社会的に許容できるものではないという原則になります。

しかしながら、パワーハラスメントの6類型として、6つが同列に位置付けられているということは、「不快原則」が「他者危害原則」に格上げされているといえます。

両者の境界は曖昧になり、これまでの常識は通用しないことに注意が必要です。

逆に、パワーハラスメントに該当しないと考えられる例は、次のとおりです。

・新規に採用した職員を育成するために、短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する。
職員を育成するために、現状よりも少し高いレベルの業務を任せる。
職員の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減する。
職員への配慮を目的として、職員の家族の状況等についてヒアリングを行う。

以上のとおり、部下や相手に対する「愛情」のある行為や、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しないものと考えられます。

「平均的な労働者の感じ方」、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準として、部下や相手に接することが重要であるといえます。

それでは、今回のまとめです。

今回は「【直前整理】パワーハラスメント防止措置が中小企業にも義務化」として、

●パワーハラスメントの発生状況
●パワーハラスメントの代償
●パワーハラスメントの防止措置
●パワーハラスメントの定義(3要素、6類型)

について解説しました。

ぜひ、今回の記事を参考にして
「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」への対応を万全に行っていきましょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)

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