今後の「証券モニタリング」の進め方

5月8日、証券取引等監視委員会から、「今後の証券モニタリングの基本的な考え方」(案)が公表されました。
 ⇒ https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2020/2020/20200508-1.htm

今後の「証券モニタリング」は、次の2点に沿って行われます。

1.ルールベースの検証
2.根本原因の究明や将来の最低基準抵触の蓋然性の評価のための業務運営態勢

この2点について、顧客に損失補塡を行っていた業者に対する証券取引等委員会の勧告内容文から考えていきます。(昨年8月の行政処分事案)
 ⇒ https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2019/2019/20190802-2.htm

(以下、証券取引等監視委員会公表文書から一部抜粋)

「経営の中枢を担う当社取締役、代表取締役管理本部長らが共謀して、組織的な指示・判断のもと、長期間にわたって、多数の顧客に対し、損失補塡を実行したもので極めて悪質であり、その背景として、法令遵守を徹底すべき経営陣自らにその意識が欠如している状況のほか、代表取締役社長を含む上記以外の経営陣も、その責務を果たさず、上記の行為を漫然と見過ごすなど、当社において、重大かつ明白な法令違反行為を防止したり、発見し、是正を図る内部管理態勢や、会社の業務を適正に執行するための経営管理態勢が欠如している状況が認められた。」

(以上、証券取引等監視委員会公表文書から一部抜粋)

1.ルールベースの検証

■勧告内容文の前段
「経営の中枢を担う当社取締役、代表取締役管理本部長らが共謀して、組織的な指示・判断のもと、長期間にわたって、多数の顧客に対し、損失補塡を実行したもので極めて悪質であり、その背景として、法令遵守を徹底すべき経営陣自らにその意識が欠如している状況…」

この勧告内容文からは、今後の「証券モニタリング」においても、法令違反の有無について厳正に検証を行っていく「ルールベースの検証」は、引き続き実施されることが読み取れます。

2.根本原因の究明や将来の最低基準抵触の蓋然性の評価のための業務運営態勢

■勧告内容文の後段
「代表取締役社長を含む上記以外の経営陣も、その責務を果たさず、上記の行為を漫然と見過ごすなど、当社において、重大かつ明白な法令違反行為を防止したり、発見し、是正を図る内部管理態勢や、会社の業務を適正に執行するための経営管理態勢が欠如している状況が認められた。」

この勧告内容文からは、今後の「証券モニタリング」においては、「ルールベースの検証」に加え、法令違反行為を「防止する」、「発見する」、「是正を図る」という「内部管理態勢」の構築、業務を適正に執行するための「経営管理態勢」の構築がより一層重視されることが読み取れます。

・問題事象の根本原因の追究を通じて、将来に向けた実効性ある改善策が講じられているか?
・ガバナンス・企業文化・内部管理態勢が全体として必要な実効性を有しているか?
・足元で問題事象が生じていなくても、ビジネスモデル、社会経済環境、規制動向、社会的な期待目線の高まり等から、将来において問題事象が発生する蓋然性が高まっていないか?

社内での議論のヒントになれば幸いです。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
Facebookでフォローする
メールマガジンでフォローする

いいなと思ったら応援しよう!