広報担当者がインバウンド取材でやっている仕事を一覧にしてみた
広報歴が長くなると、インバウンド取材で「テレビ露出した」「メディア掲載された」という経験は多くなってくる。
インバウンド取材は、広報理解のない企業の場合、社員から
「棚ぼたでしょ」「ラッキーな取材」などと、思われてしまうことが多い。故にインバウンド取材で露出や掲載がされても、評価されにくいのも現実。
恐らくそれは、広報担当者がインバウンド取材で「どんなことをやっているのかが見えていない」「分からない」からそうなっているのかなと。
この記事では「インバウンドの取材がきたとき、広報担当者は裏側でどんなことしているのか」について、書いていきます。
インバウンド取材がきたら、どう対応すればいいかわからない…と困っている広報担当者の方の役に立てたらとも思ってます。(テレビ媒体寄りで書いています)
1.インバウンド取材とは
インバウンド取材とは、「取材させてください」とメディア側から連絡がくることです。うまくいけば、テレビ露出や紙面掲載に繋がります。
2.露出(掲載)に至るまで、広報担当者はどんなことをしているのか
2-1.メディアの問い合わせ対応
まずはじめに、メディアの問い合わせ対応に応じます。
・媒体はどこか
・どんな内容の企画か(取材か)
・なにが知りたいのか
・なぜ自社なのか…etc
メディア側へヒアリングを行い、受けてもOKな取材であれば取材を受け入れます。
2-2.ディレクション開始(ここが一番労力がかかる※)
取材OKの場合、ディレクションに入ります。
基本的にテレビ媒体のニュース番組等の場合は「今日、明日取材させてください」のような、問い合わせがほとんどです。その場合、当日に社内外の調整を行うことが必須になります。
<調整タスク一覧(一部抜粋)>
・取材対象者の選定
・取材対象者の日程時間調整
・取材対象者と取材のすり合わせ
→取材の方向性確認や言ってはいけない事すり合わせ…etc
・メディア側のディレクション
→取材日が近ければ近いほど、夜遅くまで連絡が入ったりもします
・必要資料の準備
→資料が必要であれば準備します
・会議室の確保
→取材部屋とメディア側の待機部屋/荷物置き部屋の確保。当日や前日になると、会議室が全て埋まっている可能性のが高く、交渉が必須になる。
これらのことを、すべて短期間(ほとんど1日くらい)で調整します。広報担当者は、このディレクション業務に一番労力をかけているといっても過言ではありません。正直、ディレクション業務は広報担当者の腕の見せどころでもあり、社員と上手に信頼関係を築けていれば、スムーズなディレクションが出来ますが、社員が多くなってくるとなかなかスムーズにいかないのも現実。
2-3.撮影が入る旨などの周知や、執務室の整理など
取材/撮影が入る旨を社員へ周知します。執務室に売上などが貼ってあったり、ホワイトボードに成約件数等が書いてある場合は、隠したり、見えないようすることを協力要請。(編集でぼかすことも可能ですが、万が一のことを考えて)
他、執務室の整理整頓も周知。普段からオフィスが綺麗であれば、問題ありませんが、放映されても「ここのオフィスきたない…」などの印象が残ってはもったないので、気をつけましょう。
2-4.取材対象者とのすり合わせ
次に、取材対象者とのすり合わせです。取材対象者とのすり合わせは必須。
「何を話すか」「言ってはいけないことはなにか」「方向性はどうするか」「当日の服装」など、詳細にすり合わせます。特に取材対象者が代表や部長の場合、すり合わせ時間が設けられないことのが多い。取材当日や前日までにすり合わせる必要があるため、広報担当者が取材で話す文言等の精査を行い、当日までに確認してもらう必要があります。(ここも大変)
2-5.取材(撮影)当日の立ち会い
次に、撮影当日の立ち会いです。当日は、改めて企画の方向性のすり合わせや、タイムスケジュールの確認などを行った上で、撮影に入ります。
取材対象者の撮影では、取材対象者の身だしなみチェックの他に、対象者の話す言葉や文言に問題がないか、逐一確認。
言ってはいけないことを言ってしまった場合には、メディア側へ即NGの旨を伝える。メディア側から誘導尋問のような質問が入った場合も「NG」の旨を伝えます。
お互いが質問や回答しやすい和やかな雰囲気作りも広報担当者の役割。(他、話していることのメモを記録etc)
2-6.モニター、映像確認
テレビ撮影の場合、たまにですが映像の確認依頼が入ります。ここでは、基本的に映ってはいけないものが、すべてぼかされているかの確認がメインです。「対象者の話している言葉や内容変更したいです」というのは、正直難しいので、ここに関しては撮影立ち会い時にすること。
2-7.社内の期待値調整
撮影が終了後も仕事はたくさん。次に、「社内の期待値調整」を行います。撮影時間がどれだけ長くても、撮影したものがすべて放映されることはほとんどありません。ニュース番組の場合、2〜3分放映されれば良いほう。
社員は、あれだけ大々的に撮影しているのであれば、15〜30分は特集されるのだろうと期待しています。
ここで期待値調整をかけないと、「数秒しかOAされなかった」「自分の受けた取材全カットだった」…etc、広報への不信感にも繋がってきてしまいます。
協力していただくときや、告知を行うときは「これだけ撮影してもOAは3分くらいかもしれませんが…」や「取材協力いただきましたが、もしかしたらカットが多くなってしまうかもしれません…」etcと、うまく期待値調整をすることが大事です。
2-8.放映後、掲載後の確認
取材されたものがしっかりと、放映されたか/掲載されたかを確認します。ここでは、下記ポイントをチェックして次回に活かします。
<チェックポイント一覧(テレビ露出の場合)>
・誤情報がないか
・何分間放映されたか
・どの取材シーン(言葉)が使われたか
・SNS等の反響チェック …etc
放映後は、ご協力いただいた社員の方はもちろんのこと、社内全体にも共有を忘れずに。
2-9.放映後や掲載後の告知
放映後や掲載後、社内外に報告やSNSシェアを行いましょう。
パブリシティの著作権はメディア側所有です。著作物を無断で使用することは違法となるため、活用する場合は必ずメディア側へ確認を取ることが必要となります。
2-10.取材の記録を残す
取材記録を残します。対象者が話したことや、放映時間、媒体、当日のスケジュールの動き…etc。次に活かせるよう、全て記録に残しておきます。(ここは割愛)
以上、「インバウンド取材の問い合わせ〜放映後」に広報担当者が担う仕事を一部紹介しました。こうやってみると、関係者が多い故にタスク量が多いことがわかります。
3.まとめ
インバウンド取材は「棚ぼた」ではありません。広報担当者が数年かけて撒いた種から、徐々に花が咲いているときなのかなと。
広報の目的は「露出」や「掲載」だけでなく、企業のイメージを作りあげたり、アップデートをする仕事でもあります。これができているからこそ、問い合わせが多くなっているといっても過言ではありません。
インバウンド取材は、ただ立ち会ってるだけではなく、今回の記事で紹介した仕事以上に、やるべきことが存在します。広報担当の評価者の皆様、その部分についても評価してあげて下さい。
もちろん、インバウンド取材は広報担当者だけの力ではありません。マーケティング部や営業部といった、他職種の社員の方々の日々の努力の積み重ねのおかげでもあり、取材が成功するのも、快く対応してくださる社員の方の協力があるからこそです。
露出(掲載)されたらもちろん嬉しいですし、メディア露出を通していろいろな方に知っていただけること、社員の方のモチベーションがあがることなど、どれもいい事尽くし。私達広報担当者もすごく嬉しいです。
インバウンド取材が成功した際は、みんなで喜びましょう。これに尽きる。