【朔 #236】「引きずって」が「曳きずって」じゃなくて良かった
束の間の自由読書で、小笠原鳥類『素晴らしい海岸生物の観察』(思潮社、二〇〇四年)の詩篇「私達、人を引きずって歩いている」が気に入って、というか感動して、颪が強まってきたホームのベンチで何度も読んでいた。「おもしろい!」となるかと思いきや、感動している自分が不思議だった。なんだか、かなしいような詩で、でも、「引きずって」が「曳きずって」じゃなくて良かった。かなしい、とはすぐ腐る形容詞で、一等、佳い……。
ダム湖に行くか、運河に行くか迷っていると、
虎がわらわら躍り出てくる。極月の、
欸乃とともに眠りたりて試すような昼の星が脳の奥処に犇めいてつまり雁が鴨を真似たくなるハンバーグステーキ風建築。
石蕗の花は幽霊だと断言できる。