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【朔 #29】セッカ(雪加、雪下)とは金属的咽喉を有つわかくさの妻

 四つの季語をまとめていて、大変に疲れる。
 今、欲しいのは吉増剛造『花火の家の入口で』。
 かじりついて、にじりよって、レンズの罅は気にするな、……。
 蘂ではなく橤という漢字。そんな感じ。
 雀が低木に群れていて、遠くからでも聞こえるほどに囀が喧しく、にじりよって、にじりよって、一樹に何羽いるのやら。ある近さまで行くと、ピタッと鳴き止んだ。こちらも歩みを止める。三秒ほどして、近くの桜に一斉に雀が飛び立った。どうも、警戒区域に足を踏み入れたらしかった。
 セッカ(雪加、雪下)とは金属的咽喉を有つわかくさの妻。否、夫。海溝にまで微かに届くその裏声、浦聲、浦越え。
 瞬間、把、多、私、たち、さちさち、潮の香に抱かれたままかもしれない。

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