【朔 #171】葛の高貴な明るさ
葛の野生味の無さ。
洗練、恋々?
露ではなく雨。
ああ、とみに、
師が遠く思へる夜長。
いつもさうだらう。
翻車魚の深い溜息の為に植物プランクトンを死なせて(細胞はこゑなく死せり五月雨/髙柳克弘)ゐるとなんだかこつちまで虚数単位に巣構ふ蜜蜂の翅の擦過熱と同心円。
木が死んでゐる。
道が死んでゐる。特に、
明日が死んでゐる。
それはとても葛の高貴な明るさに、
耐えきれないよ。
葛のひと葉のうらみ葛の葉。
あっ、
狐だつたか。
おい、晴明。
手毬がごろんと富士山麓に遺棄されてゐる。