【朔 #80】スッスッスッ……
意味不明かもしれないが、ありのまま。
昨日の昼間、創作のために必要になって風車を工作した。紙と爪楊枝だけで作ったものの、よく廻る。そうそう、昨日の神戸は風が強かったのだ。窓辺にセロハンテープで設置して、それが廻るたび、スッスッスッ……と紙の擦れる音がする(空回りせよかざぐるまかざぐるま/櫂未知子)。
夜には春雷(春雷や暗き厨の桜鯛/水原秋櫻子)に大雨。その間もやはり廻る風車。窓外の闇に向かって、スッスッスッ……。私はというと、呻吟しながらなんとか五句を生み出そうとしていた。
深夜から未明にかけて雷雨は収まり、風も止んだ。一合呑んだ私に残されたのはピカソのフクロウ(梟に梟かへりくる夜か/正木ゆう子)の素描と静止したまま闇に向かう風車、その安っぽいセロハンテープに付着している睫毛──。
急に、
私には恋人などいなかったのではないかと、
木星のような戯言が、
口を、
こぼれる。あなたは、
誰?
丘、
海峡、
蓬。
昨日も、
囀りながら眠った人よ。
立像の足を曳く。
もう、
猿の、
宙吊り。