【朔 #229】海鼠
海鼠の尻とも口ともわからぬとにかく端を切ってみて人とも魚とも齧歯類ともわからぬ歯が出てくる魚にも歯がある意味には明日がないみたいだ水の層に眼を乗せて鯉が迫ってきた夜明け前サスティナブル権現が傾いて前傾全景全系回路と歌舞伎と海鼠の腸を取るためには先ず腹に見立てた箇所を切り開けば良くその時になにかが漏れてくるかもしれないが捨てることそれは未消化のデトリタス死体の死体と言ったところか砂とともに掻き集めるのか否か砂になるのは岩石である或は骨格である国家に私は不要かもしれないが時々この国土の上でささやかな恋を終わらせるコンドルだと昔思っていたのは鷺で白鷺ではなく青鷺で寒々しい突堤に降り立つ瞬間を雪が繰り返す妄想感想懸想連想恋々俎の上には一枚となった海鼠が残されるこれは算数の時間に円筒を開いて見せてくれた先生のことを思わずともわかる算数の時間はクラスを二分して一方を別教室において授業していたその時に離れ離れになる蒲公英がたまらなく燃えていて田螺の殻に藻が生えているのは滑稽だったし大食の朝は必ず隆々たる黒檀が齧られ高く音が鳴り響く谷には後世音の谷と名がつくことになるのだった体色の褪せるまでではなくてもいいただ一言こりこりと海鼠を切ってゆくこれは一枚から数本に進化する過程家庭にふくらはぎが並んでいる絡んでいる睨んでいる吐き気を催す蝶の後翅まであと数ミリのところで私は穴に落ちてゆく真っ白になりながら君が上の階から降りてきてランドセルが上下に弾むのを誰か見ていたのかほら今し海鼠が炊かれる。