【朔 #161】環太平洋の水母たちに告ぐ
階段室とはどんな部屋なのか。
それは天使の休憩所みたいな部屋か。紫煙の淀む天井。
弾丸がこぼれるのと画鋲がこぼれるのは大した差がないが、七月の、
饑神、
はたゝ神、
梅の色の(つまりは純白の)羽を止めて扇風機はわずかに傾いた。
お前にもある二つの精神の二つの穴の、
筒鳥はひとりだ、青葉木菟も。
桃、桃、桃、桃、
桃。
夜が来る、死の隠喩などではなく。
指を贈ったのはゴッホだったか/ゴッホではない。
舟屋と舟屋を繋ぐ猿どもの腕に散々月光を降らしめて、おろおろとトランプを吐瀉する奇術の真似事は紫陽花よりも重い環太平洋の水母たちに告ぐ、平家の血を養うための労働だ、舟は労働の唯一神だ、なお熱るドライヤーに揚羽蝶がとまり、鰹、鹿、犬、ペリカンと順に拝む。
茴香の花はどんな香りがするのだろう……、
誰がこの舟を曳くんだろう……。