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【朔 #104】籐椅子から見て等間隔に衰えてゆく馬の歯と葛の葉

 先日、吉増さんが言及されていた『三田文学』のエッセー、岸田将幸「幼い筆跡」。なるほど。
 空海展へ行こうと思っていた矢先、図録が売り切れたとのこと。奈良、奈良なあ。
 鹿の子の瞳に牡丹が頽れてゆく様を見たことがあるか。黄金の塔は聳え、同じく群青の滝も聳え、聳えたつJésus、……。飽食の実存が行き交う駅前に立ってみて、すりよってくる牡鹿の群れ。袋角、梟の、朦々と。
 梟の、身辺整理の覚束ない折れた鉛筆と挽肉器も籐椅子から見て等間隔に衰えてゆく馬の歯と葛の葉。
 幼い、
 蟇が、
 死んだ。

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