【朔 #37】溶解しがたい卵が並んでいて奇岩の崩落
梅に訊いてみたいことがある。
紅白の遅速。
傀儡の軋む音、歯のずれる音、
櫂を畳む音、……。
今の私(出し抜けに、本人が出てくる)に詩が書けるのかしら(霾るやぞろりと黒き波頭/小川軽舟)。スペインからの嵐がスペインへ帰る用意を始めている。カタルーニャ。そこには、溶解しがたい卵が並んでいて奇岩の崩落。あらゆる表現が今、生への呪いと歯の不安につながる。
ダリ(Dali)!
脳の下底に台車の弾む音がする。言語の柔軟性がない。すなわち、吃り。黙(mute)へ。空(クウ)へ。無(ム)へ。渚に、石蓴が渦巻く季節。淡路島に行きたくなって、まだ、生きるつもりらしい。あっ、水を一杯。有機的に絡まる尿(ゆまり)こそが詩だ。真水の揺曳なんて見飽きた。と言いつつ、水温む。
ぬくなったなぁ、
ともかく、
石蓴搔く、
さをとめのわかくさのあづまのいなづま。
仔猫を掴み出す藪に母猫は死んでいる。その、掴み出す手に母猫の口はのりうつる。あなたは一種の化け猫である。